真上まうえ)” の例文
旧字:眞上
伊那丸いなまるの一とうが立てこもる小太郎山こたろうざんとりでが、いま、立っている真上まうえだとは、ゆめにも知らずにいただけに、身のさむくしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのルゾン号はいまもクイーン・メリー号を捜索のために、ちょうどこの真上まうえの洋上をただよっているのですよ
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その真上まうえには電灯が煌々くわうくわうと光を放つてゐる。かたはらには瀬戸火鉢せとひばちの鉄瓶が虫の啼くやうにたぎつてゐる。もし夜寒よさむが甚しければ、少し離れた瓦斯煖炉ガスだんろにも赤々と火が動いてゐる。
漱石山房の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それはしろっぽい、幾分いくぶんふわふわしたもので、そして普通ふつう裸体はだかでございます。それが肉体にくたい真上まうえ空中くうちゅうに、おな姿勢しせい横臥おうがしている光景ありさまは、けっしてあまりよいものではございませぬ。
町の真上まうえに黒いガスの雲をわかしていた。
いまは疑いの余地もない。大将尊氏の胸にあるものは、そのからの敵軍を、不意に、真上まうえからち下ろすにあったにちがいない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その天井の、ちょうど女の屍体がよこたわっている真上まうえおぼしい箇所に、小さな、黒いが見えていたのだ。いや、黒いと思ったのは、実は真紅な環で、血のにじみ出た環であったのだ。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして咲耶子が、われとわが吹く音色ねいろにじぶんをすら忘れかけたころ、さらにすさまじい一じん疾風しっぷうが、月のふところをでて、小太郎山こたろうざん真上まうえをびゅうッ——と旋回せんかいしはじめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうなると、たとえば、にこにこ笑って人と話をしていながら、手に握ったナイフで相手の心臓の真上まうえをぐさりと刺すといったようなことを、一向昂奮こうふんもせず周章あわてもせず、平気でやる。
艦の位置は、今や、ほぼクロクロ島の真上まうえにあるのだ!
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)