ざら)” の例文
彼は最初に食物ざらから自分の分を取ったし、いつも十分に取っていた。彼は騒々しく話したて、自分の言葉にみずから大笑いをした。
青い干葡萄ほしぶどうのはいったガラスざら、それから菓子を盛ったもう一つの皿が、そのままになっている、どうも誰かを供応していたらしい。
……可愛いキュウリさん! (あたりを見回し、彼女を抱く。彼女はキャッと叫んで受けざらを落す。ヤーシャすばやく退場)
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
葉子は涙を流さんばかりになって執念しゅうねくソップを飲ませようとした結果、貞世はそこにあったソップざらていながらひっくり返してしまったのだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「代助にわかるものか」と云つて、誠吾は弟のくちびるのあたりをながめてゐた。代助は一口ひとくちんでさかづきしたおろした。さかなの代りに薄いウエーファーが菓子ざらにあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
少し焼くとバターが溶けてブリキざらあふれ出ますからそれを引出ひきだしてはさじすくって上からかけてちょうど肉類のロースを焼くように幾度いくどもそうして三十分間も焼きますと出来上ります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
コントラ・ソシアル街らしい一つの街路に達した時、一発の銃弾が、どこからともなくやみを貫いてき、そばをかすめ過ぎ、すぐ頭の上で、ある理髪屋の店に下がっていた銅の髯剃ひげそざらに穴をあけた。
グラチアははっとして、スープざらの中にさじを取り落し、自分と従姉いとことにスープをはねかけた。コレットは、行儀よく食卓につく教えをまず受けるべきだと言った。
ベシンざら 夏付録 台所道具の図
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
このジュリアンは、トゥールーズ生まれの若い医者で、最近クリストフと同階の隣人となり、ときどきアルコールランプや雨傘あまがさやコーヒーざらなどを借りに来ては、いつもこわして返すのだった。