白頭はくとう)” の例文
電気学会長である帝大工学部長の川山博士の白頭はくとうや、珍らしく背広を着用に及んでいる白皙はくせき長身ちょうしんの海軍技術本部長の蓑浦みのうら中将や
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それはその花がんで実になると、それが茎頂けいちょうに集合し白く蓬々ほうほうとしていて、あたかもおきな白頭はくとうに似ているから、それでオキナグサとそう呼ぶのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
寂寞じゃくまく古今ここんの春をつらぬいて、花をいとえば足を着くるに地なき小村こむらに、婆さんは幾年いくねんの昔からじゃらん、じゃらんを数え尽くして、今日こんにち白頭はくとうに至ったのだろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
のみならず毎日出社すべき義務さへもひようとはしない。これは官等の高下をも明かにしない予にとつて、白頭はくとうと共に勅任官をたまはるよりははるかに居心の好い位置である。
入社の辞 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
遼東りょうとう白頭はくとういのこを珍しがりたる如く、屑屋先生は白菊を余り御覧なされぬ者と相見え候。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
これは官等の高下をも明かにしない予にとって、白頭はくとうと共に勅任官を賜るよりは遥に居心いごこちの好い位置である。この意味に於て、予は予自身の為に心から予の入社を祝したいと思う。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
この世に生まれるのは解けぬ謎を、押しつけられて、白頭はくとう儃佪せんかいし、中夜ちゅうや煩悶はんもんするために生まれるのである。親の謎を解くためには、自分が親と同体にならねばならぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
保吉はちょいと苦笑したまま、洗面台の前へ手を洗いに行った。その時ふとかがみを見ると、驚いたことにタウンゼンド氏はいつのまにか美少年に変り、保吉自身は腰の曲った白頭はくとうの老人に変っていた。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
春秋しゅんじゅうに指を折り尽して、白頭はくとう呻吟しんぎんするのといえども、一生を回顧して、閲歴の波動を順次に点検し来るとき、かつては微光の臭骸しゅうがいれて、われを忘れし、拍手はくしゅきょうび起す事が出来よう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)