白河しらかわ)” の例文
日本にっぽん国中くにじゅう方々ほうぼうめぐりあるいて、あるとき奥州おうしゅうからみやこかえろうとする途中とちゅう白河しらかわせきえて、下野しもつけ那須野なすのはらにかかりました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それより以前にも一度、汽車で白河しらかわを越し、秋草のさきみだれているのを車の窓からながめて、行って、仙台よりも先のいちせきというところにある知り人をたずねたこともあります。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのときに自分ひとりで出かけたのですが、白河しらかわの町には横田君という人がいる。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
岡崎の草庵の地は、松に囲まれた林の陰で、その松のあいだから白河しらかわの流れがいて見えた。うしろは、神楽岡かぐらがおかの台地である。近衛坂このえざかを下る人の姿が、草庵の台所から小さく望まれるのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜明けの五時十分発の白河しらかわ行きに乗り込みました。
たずねびと (新字新仮名) / 太宰治(著)
むかし、京都きょうとから諸国修行しょこくしゅぎょうに出たぼうさんが、白河しらかわせきえて奥州おうしゅうはいりました。磐城国いわきのくに福島ふくしまちか安達あだちはらというはらにかかりますと、みじかあきの日がとっぷりれました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
午後三時頃、白河しらかわ停車場前の茶店に休む。隣りの床几しょうぎには二十四、五の小粋な女が腰をかけていた。女は茶店の男にむかって、黒磯くろいそへゆく近路を訊いている。あるいてゆく積りらしい。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
平田篤胤あつたね没後の門人らは、しきりに実行を思うころであった。伊那いなの谷の方のだれ彼は白河しらかわ家を足だまりにして、京都の公卿くげたちの間に遊説ゆうぜいを思い立つものがある。すでに出発したものもある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)