白布はくふ)” の例文
冷水れいすいをたたえた手桶ておけ小柄杓こびしゃく、それに、あせどめの白布はくふをそえてはこんできた若い武士ぶしがある。一同にその使用をすすめたのち
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
品川氏はそう云って、又瓶の置いてある所へ立って行って、入念に検査していたが、やがて、深い溜息と共に、瓶の白布はくふを元の様にかぶせて
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一彦は寝そべったまま白布はくふを手にして振り、爺さんはしきりに炭焼竈の煙をさかんにあげて飛行機の方に相図あいずをしました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これを一か月間に白布はくふ一反ずつ長尺ちょうじゃくに織りあげさせ、ぬのの端にその村の地名を書き、それぞれ役人があずかりおいて、命令によってただちに駅送えきそうする。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこまで聞くと、半身を白布はくふで巻いて、ウンウンうなっていた新助は、いきなり起上がってい出そうとしました。
めしくはせろ!』と銀之助は忌々いま/\しさうに言つて、白布はくふけてある長方形の食卓の前にドツカとはつた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
白布はくふに被はれたる牧に羊の迷ふが如きもあり。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
がくれに白布はくふけてりました。
その黒い影の手には、白布はくふを丸めた様なものが握られていた。それが矢の様な素早さで、青年の顔の前に飛びついて行った。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
白布はくふで、目をふさがれている法師ほうしすがたは、その時、顔をあげ、かたをゆすぶッて、なにやら、無念むねんそうにさけぼうとしたが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言っているうちに、大粒の水がバラバラと舟板を打ったかと思うと、ぞっと襟元が冷え渡って、一時に天地をつなぐ白布はくふたき河づらをたたき、飛沫しぶきにくもる深夜の雨だ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、なおもその附近には、手の形らしい血痕けっこんが、いくつも、べたべたと白布はくふのうえについていた。そこは、ちょうど、あのうつくしい花籠がおいてあった前あたりであった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
六畳の奥の間に、初代はもうほとけになって横わっていた。全身に白い布が覆われ、その前に白布はくふをかけた机を据えて、小さな蝋燭ろうそくと線香が立ててあった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一方の壁に映写用の白布はくふが張ってあり、器械類、簡単な椅子テーブルなどがゴチャゴチャと並んでいる。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
波越氏はそれを聞くと、ハッとした様に立上って、窓際に近づき、瓶の覆いの白布はくふを取りのけて見た。同時に「アッ」という叫声。瓶の底に、一本の指が切離されて、フワフワと漂っている。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)