)” の例文
そしてその毛の残つた処は非常なゆさを感じたり、或は痛んで脹れ上つたりさへもする。それはよくビロオドのやうな幼虫とまちがへられる。
人間の取り扱が俄然豹変がぜんひょうへんしたので、いくらゆくても人力を利用する事は出来ん。だから第二の方法によって松皮しょうひ摩擦法まさつほうをやるよりほかに分別はない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
旦那が少し春気はるけ頭髪あたまいゝから床屋を呼びにやってくれと云うと、はてな、まだいつもより少し刈込みがお早いが、それには何処かへおいでなさるのだろう
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
声がまた大きなバスで、人を見ると鼻の横をき、細い眼でいつも又この人は笑ってばかりいたが、この叔母ほど村で好かれていた女の人もあるまいと思われた。
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
あまのじゃくがどっかで哄笑わらっている、私は悲しくなってくると、足の裏がゆくなるのだ。一人でしゃべっている男のそばで、私はそっと、月に鏡をかたぶけて見た。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
なにしろ年をとりますと禿げますせいか、頭が始終、ゆうございまして、時ならないときに梳き度くなるのでございます。ほんとに我儘をさせて頂いて申訳ございません。
或る秋の紫式部 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
過去を聯想するには、その時代、その時分にはやつた流行歌をうたつて見るに限る——日清談判破裂して……この歌を低吟すると霜やけのゆかつた幼年時の冬が思ひ出される。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
忍耐がまんが出来るまでは口にする人じゃなし、それに、ああすればこうと、ポンといえば灰吹きどころじゃなく心持ちを読んで、ゆいところへ手の届くように、相手に口をきらせやしないから
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
三人ともまるで仕事みたいに気を入れてやってる。海老茶色ルバーシカの男は、真面目くさった顔つきで、ときどき横っ腹を着ているものごときながら、札をひろったり、捨てたりしている。
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
私は鼻をつまんで、三度まわって、それから片手でコップの水を二拝して一息で飲む、というまじないを、再三再四、執拗しつように試みたが、だめであった。耳のあなが、しきりにゆい。これも怪しかった。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
むづゆいやうな、気の抜けた、さみしい、弱い、せうことなしの
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
俊亮は、むずゆそうに頬をゆがめた。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と栖方は低く笑いながら、額に日灼ひやけのすじの入った頭をいた。狂人の寝言のように無雑作むぞうさにそう云うのも、よく聞きわけて見ると、恐るべき光線の秘密を呟いているのだった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
田口はこう云って、自分の前に引きつけた手提煙草盆てさげたばこぼん抽出ひきだしを開けると、その中からつのでできた細長い耳掻みみかきさがし出した。それを右の耳の中に入れて、さもゆそうにき廻した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吸入器の湯気のさはりの頬にゆくいくたびか拭きてなほ暫時しましあり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
吸入器のゆき湯気ふくしまらくを幽かに雪もふれなとぞ思ふ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
声あげて笑ふ男子をのこが眼のゆさ霹靂はたたがみなし妻にころばゆ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)