田舎武士いなかざむらい)” の例文
旧字:田舍武士
ままよ、どうせ田舎武士いなかざむらいに作ってきた風体ふうてい、かまうものか、といった調子で、かれはズカリとそこへ入って
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんな田舎武士いなかざむらいの心にも、好色的な風流気があって、美人を多く妻妾さいしょうとして集めたい望みを持っているのである。少弐家の姫君のことを大夫の監は聞きつけて
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「いやなに、情夫まぶは引け過ぎと申すで、そう急ぐこともござらぬ、はっはっは」と相手は少しも動じない。「それとも、惚れて通うに田舎武士いなかざむらいは邪魔だといわるるか」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「さても、経遠、兼康、今朝方、成親卿に対する振舞は余りにも礼儀知らずであったぞ。重盛の耳に入ることを考えてはいなかったのか、田舎武士いなかざむらいはいたし方ないものだのう」
……それよりもくすのき氏の姫が、田舎武士いなかざむらいをなぶるらしい。——大森彦七——そばへ寄ると、——便びんのういかがや——と莞爾にっこりして、直ぐふわりと肩にかかりそうで、不気味なうちにも背がほてった。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おりから関東武士の面目というものは、旗本の間にはなく、譜代大名の中にもなく、かろうじて彼ら田舎武士いなかざむらいの間に残って、そしてうしおの湧くような意気組みの西国武士に当ることになったのです。
贈太政大臣信長の婿たる此の忠三郎がよし無き田舎武士いなかざむらい我武者がむしゃ共をも、事と品によりては相手にせねばならぬ、おもしろからぬ運命はめに立至ったが忌々いまいましい、と胸中のうつをしめやかにらした。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
田舎武士いなかざむらいなどにとつがせておしまいすることなどは堪えうることでないと思っていることも知らずに、自身の力を過信している監は、手紙を書いて送ってきたりするのである。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
往来おうらいをみていると、宿やどをとれずにかけあっている田舎武士いなかざむらいや、酒気しゅきをおびている町人ちょうにんや、れをよんでいる百姓ひゃくしょうや、えッさえッさと早駕はやかごで、おくればせに遠地えんちからけつけてくる試合しあい参加者さんかしゃ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)