珠数じゆず)” の例文
旧字:珠數
若い兵隊が甲鉄艦のやうな靴をひきずつて、ぞろぞろ通りかかると、二階から三階から白粉おしろいの顔が梅の実のやうに珠数じゆずつなぎに覗いた。
中がらすの障子のうちには今様いまやう按察あぜち後室こうしつ珠数じゆずをつまぐつて、かぶりの若紫わかむらさき立出たちいづるやと思はるる、その一トかまへが大黒屋の寮なり。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
旅の仕度が出来た後、丑松はこの二階を下りて、蔵裏くりの広間のところでみんなと一緒に茶を飲んだ。新しい木製の珠数じゆず、それが奥様からの餞別であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「俺なら、これ一本で沢山だ、何の狼の五匹や十匹——珠数じゆずつなぎのヴオレイを喰はして、生捕りにしてしまふ。」
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
みすまるのたま、もとより硝子がらすさふらふべけれど、美しければ二人の娘のれうに緑と薄紫の二掛ふたかけを求めさふらふ珠数じゆずにして朝にゆふべに白き手に打ち揉むにもよろしからん。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
全篇の大骨子をの仁義八行の珠数じゆずに示したるは、極めて美くしく儒道と仏道とを錯綜せしめたるものなり。
水晶の珠数じゆずにもき、珊瑚さんご珠数じゆずにも
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
鈴木松年氏はこの二三年来外へ出掛ける時には、いつも珠数じゆずを一つたもとの底へ投げ込んで置く事にめてゐる。
我はこの青玉せいぎよく珠数じゆずを解きほぐして
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
句読点といへば、ある時近松門左衛門のとこに、かねて昵懇なじみ珠数じゆず屋が訪ねて来た。その折門左もんざは鼻先に眼鏡をかけて、自作の浄瑠璃にせつせと句読点を打つてゐた。
この青玉せいぎよく珠数じゆず爪繰つまぐりしとよ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
むかし公家くげなにがしが死にかゝつてゐると、不断顔昵懇かほなじみの坊さんが出て来て(医者が来るのが遅過ぎる時には、きつと坊主が来るのが早過ぎるものなのだ)枕頭まくらもと珠数じゆずをさらさら言はせながら