率先そっせん)” の例文
諸卿しょけいの素直なる御賛同を得たるも、教訓する者みずから率先そっせんして実行せざれば、あたら卓説も瓦礫がれきに等しく意味無きものと相成るべく
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
また事実、みな必死に働いてくれておるのに、それに率先そっせんすべき身でありながら、兄貴ばかりは、そうやって、無精ぶしょうひげを伸ばして——。
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
女はなおさらで夫にすら見せないという人が幾らもあった。したがってその裸体を非常に嫌い、牧師の夫人たちが率先そっせんして、この寒冷紗をはやらせたのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
通したのですから、このたびのことには、率先そっせん、自分が陣頭に出て当りましょう。出陣のしたく、隊伍一切の編成は、統領から軍政司の裴宣はいせんへお命じ出しください
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先生のきょ、同じく戒心かいしんあるにもかかわらず、数十の生徒せいとともな跣足せんそく率先そっせんして池水いけみずくみては門前に運び出し、泥塗満身でいとまんしん消防しょうぼう尽力じんりょくせらるること一霎いっしょう時間じかんよっかろうじてそのさいまぬかれたり。
諸国に率先そっせんして、婦人の団結をはかり、しばしば志士論客ろんかくしょうじては天賦てんぷ人権自由平等の説を聴き、おさおさ女子古来の陋習ろうしゅうを破らん事を務めしに、風潮の向かう所入会者引きも切らず
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
一同がもっとも感激かんげきしたのはゴルドンの態度たいどであった、かれは大統領の任を富士男にわたすとともに率先そっせんして他の少年とともに富士男の号令に服従して、もっとも美しき例をしめした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いずれも腐儒ふじゅ因循いんじゅんをわらい、鎖港論さこうろんを空吹く風と聞き流し、率先そっせんして西洋事情の紹介や、医書、究理書の翻刻に力を入れ、長崎や横浜に仕入れの出店を持って手びろく舶載物はくさいものを輸入する
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「実はナ。あれからすぐ、貴殿にび状を入れようというので、拙者など、率先そっせんしてゆくえをさがしたが、どうも弱った。皆目かいもく影を見せんとは、人が悪いよ、貴殿も」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もし、おゆるしあれば、勝入は、一族をあげ、率先そっせんして、かならず岡崎の城をいてごらんに入れる。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海を故郷とする者の生活体験が、今まで比較的にかえりみられなかったことが事実だとすれば、その学風を一新するがためにも、やはり日本人は率先そっせんしなければならぬであろう。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
率先そっせんして西洋の医学機械を輸入しようという志を立てたいっぷう変った人物。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
中頃、後鳥羽院ごとばいんの武者所に勤番し、承久ノ乱にも宮方、元寇げんこうらんにも、率先そっせん、国難にあたってきた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父の大宰だざいノ少弐妙恵みょうけいから命ぜられて、弟の頼澄よりずみ、一子の氏鶴丸しかくまる、ほか郎党三百をひきつれ、率先そっせん
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)