獅子王ししおう)” の例文
天子てんしさまはたいそう頼政よりまさ手柄てがらをおほめになって、獅子王ししおうというりっぱなつるぎに、おうわぎ一重ひとかさえて、頼政よりまさにおやりになりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いや、少なくともそのばん歌ったように歌うのを開いたことがなかった。かれは二つの歌をえらんだ。一つはジョセフの物語で、一つはリシャール獅子王ししおうの歌であった。
離れません。あなたのためには水火にも入ります。あの『えそぽ』の話の獅子王ししおうさえ、ねずみに救われるではありませんか? わたしはその鼠になります。わたしは、——
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御悩み快癒された天皇は、喜びのあまり獅子王ししおうという剣を頼政に賜った。宇治左大臣頼長がこれを頂いて御前の階段を半ばまで降りたとき、ほととぎすが鳴いて空を渡った。
八宗九宗の碩徳せきとくたち虎豹鶴鷺こひょうかくろぐれたまえる中にも絶類抜群にて、たとえば獅子王ししおう孔雀王くじゃくおう、我らが頼むこの寺の塔も絶類抜群にて、奈良や京都はいざ知らず上野浅草芝山内
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
玉楼金殿ぎょくろうきんでんを空想して、鳳凰ほうおうの舞うたつ宮居みやいに、牡丹ぼたんに遊ぶ麒麟きりんを見ながら、獅子王ししおうの座に朝日影さす、桜の花をふすまとして、明月めいげつの如き真珠を枕に、勿体もったいなや、御添臥おんそいぶしを夢見るかも知れぬ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして何よりも——眠れる獅子王ししおうの傍に咲く牡丹花ぼたんかのような容顔、春風になぶられてうごく雄獅子のひげに戯むれ遊ぶ、翩翻へんぽんたる胡蝶こちょうのような風姿すがた、彼女たちの世界の、最大な誇りをもって
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
たび目に尼提の曲った道にも如来は獅子王ししおうのように歩いている。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)