濛濛もうもう)” の例文
これも仔細しさいに眺めていると、種族の知性と論理の国際性との分別し難い暗黒面から立ち昇っている濛濛もうもうとした煙であった。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
さうしてその四かくあななかから、すすとかしたやうなどすぐろ空氣くうきが、にはか息苦いきぐるしいけむりになつて濛濛もうもう車内しやないみなぎした。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
みなわ、と云ったことばに、山西はびっくりして蒸気ゆげ濛濛もうもうと立っている鍋越しに小女こむすめの方を見た。小女こむすめって棚の方へ往こうとして、ちらりと客の方を見て笑った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夜明よあけがたまでんな風で遊びあか習慣ならひだが、晶子が室内に濛濛もうもうとして出場でばを失つて居る煙草たばこの煙に頭痛を感じると云ふので十二時少し過ぎに帰つて来た。(六月十七日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
急阪きふはんのいただきくら濛濛もうもうと桜のふぶき吹きとざしたり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
水交社すいこうしゃが見えて来た。この海軍将校の集会所へ這入はいるのは、梶には初めてであった。どこの煙筒からも煙の出ないころだったが、ここの高い煙筒だけ一本濛濛もうもうと煙を噴き上げていた。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
濛濛もうもうと渦巻く煤煙ばいえん
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)