浮織うきおり)” の例文
タルターロびとまたはトルコ人の作れるきぬ浮織うきおり裏文表文うらあやおてあやにだにかく多くの色あるはなく、アラーニエのはたにだに 一六—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
見るとそれは、ところどころ火に焦がされた女の被布ひふ浮織うきおり唐草の江戸紫は、まぎれもなく、お綱の着ていたものである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豐岡とよをかからあひだ夕雲ゆふぐも低迷ていめいして小浪さゝなみ浮織うきおりもんいた、漫々まん/\たる練絹ねりぎぬに、汽車きしやまどからをのばせば、あし葉越はごしに、さはるとれさうなおもひとほつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
織方も様々で、浮織うきおりといって、模様の部分を浮き糸にさせるものや、綾織あやおり絽織ろおりや、変化が多いのであります。「みんさあ」と呼ぶ帯の織方も特色を見せます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
風は紋羅もんら浮織うきおり
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
巌流は、浮織うきおりの白絹の小袖に、眼のさめるような、猩々緋しょうじょうひ袖無そでなし羽織をかさね、葡萄色ぶどういろ染革そめがわ裁附袴たっつけ穿いていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋の末にもなりたれば、籐筵とうむしろに代うるに秋野のにしき浮織うきおりにせる、花毛氈はなもうせんをもってして、いと華々しく敷詰めたり。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は滞在中雨の降る日以外は、他に約束のない限りは、いつも夕方の六時を心待ちしました。素晴らしいかすりしま浮織うきおりの着物が色々と茣蓙ござの上に拡げてあります。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
沖縄の織物で最も驚歎すべきものはかすりの類です。続いては浮織うきおりの類なのです。絣は西洋で全く発達しなかった手法であって、東洋独自の織物として、世界にその名が響く時は来るでしょう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)