河南かなん)” の例文
根は河南かなん生れの俊敏なつらだましい。その眼、その唇、びんにもつながるばかりな長い眉、くそでもくらえといった風貌がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何んでも彼れの話によれば、直隷ちよくれい河南かなん大饑饉だいききんの際には、支那人は牛を売るよりも先に女房を売りに来たといふことである。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
支那にはまた近来河南かなん白狼匪はくろうひなど称する土匪が起っている。河南といえば支那に於ける中原であるが、彼等は此処ここに起り、将来更に蔓延せんとする有様である。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
天山から、そんなに早く、東方四千里の河南かなん(オルドス)の地まで行けるはずがないからである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
河南かなんの方に城のほりの神が欠けている。その方がこの職に適任であるから、赴任ふにんするがいい。」
考城隍 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
四川しせん広東カントンは? ちょうど今戦争の真最中だし、山東さんとう河南かなんの方は? おお土匪どひが人質をさらってゆく。もし人質に取られたら、幸福な家庭はすぐに不幸な家庭になってしまう。
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
年三十に近くして、愚庵ぐあんきゅう和尚に径山けいざんに従って禅学を習う。いとまあれば内外の典籍を披閲ひえつしてもって才識に資す。因って河南かなん二程先生にていせんせいの遺書と新安しんあん晦庵朱先生かいあんしゅせんせいの語録をる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
隋の煬帝ようだい長安ちょうあん顕仁宮けんじんきゅういとなむや河南かなん済渠さいきょを開きつつみに柳を植うる事一千三百里という。
中華の黄土大陸は大宋国だいそうこくといって、首都を河南かなん省の開封かいほう東京とうけいにさだめ、宋朝歴代の王業は、四代の仁宗じんそう皇帝につがれていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
景隆は長身にして眉目疎秀びもくそしゅう雍容都雅ようようとが顧盻偉然こべんいぜん卒爾そつじに之を望めば大人物の如くなりしかば、しばしばでゝ軍を湖広ここう陝西せんせい河南かなんに練り、左軍都督府事さぐんととくふじとなりたるほかには、すところも無く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
河南かなん洛陽らくようのもので、薛永せつえいといい、あだ名を病大虫びょうだいちゅうとよばれています。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白馬はくばとは、河北かほく河南かなんの国境にあたる平野をいう。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)