死物狂しにものぐる)” の例文
血を見ると寄手よせても狂う、米友はなお狂う。一人突くも十人突くも罪は同じ、それで米友は死物狂しにものぐるいになったらしいのであります。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
乗客が構わずそれをば踏み付けて行こうとするので、此度こんどは女房が死物狂しにものぐるいに叫び出した。口癖になった車掌はきいろい声で
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
想像も及ばない怪奇な事実を叫びつづけながら、私の過去の記憶を喚び起すべく、死物狂しにものぐるいに努力し続けているらしい。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大衆はのっけに打ってかかってもいいようなものの、昭青年の意気込みには、鯉魚と答える一筋のおくに、男が女一人を全面的にかばって立った死物狂しにものぐるいの力がこもっています。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
小さな魚類が鮫を恐れて、共通な一点を中心に、かたまり合っているのは誠に興味があった。一網打尽ということが出来たであろう。我々は死物狂しにものぐるいで追いかけたが、鮫は遂に逃げ去った。
れは/\どうも仕方しかたがない、今まで数年すねんあいだ死物狂しにものぐるいになって和蘭オランダの書を読むことを勉強した、その勉強したものが、今は何にもならない、商売人の看板を見ても読むことが出来ない
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
れぞ虎髯大尉こぜんたいゐ大勳功だいくんこう! いましも死物狂しにものぐるひに、本艦ほんかん目掛めがけて、突貫とつくわんきた一船いつせん彈藥庫だんやくこ命中めいちうして、船中せんちう船外せんぐわい猛火まうくわ㷔々えん/\かぢ微塵みじんくだけて、ふね獨樂こまごとまわる、海底かいていよりは海底戰鬪艇かいていせんとうてい
とどん/″\/″\/″\と死物狂しにものぐるい、すがり付いて来る奴を
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
死物狂しにものぐるいであることが判った。
悪魔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
剃刀一挺を得物の死物狂しにものぐるい、髪が乱れ逆立って、半裸体で荒れ狂う有様、物凄ものすごいばかり。しかし、いくら気があせっても多勢の男に一人の女。
それでもなお死物狂しにものぐるいの努力で踏みこたえつつ大切な鞄を抱え直さなければならなかった。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
落武者は十一人と数が知れても、それが死物狂しにものぐるいにあばれる時は危険の程度が測られない、新八郎が惣太に火薬を授けたのは、その辺の遠慮から出た計画と見える。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)