正視せいし)” の例文
群集ぐんしゅうはただ、こう口からもらしただけであった。正視せいしするにしのびないで、なかには、矢来やらいにつかまったままあおざめた者すらある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやその化物屋敷のような物凄い光景は、正視せいしするのが恐ろしく、思わず眼を閉じて、日頃となえたこともなかったお念仏ねんぶつ口誦くちずさんだほどでした
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
空気ポンプはそのよく日もまたそのよく日も正九郎しょうくろうをおびやかした。村中の人がそのことを知っているような気がして、正九郎は人の顔を正視せいしすることができなかった。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
かれ高座かうざはう正視せいしして、熱心ねつしん淨瑠璃じやうるりかうとつとめた。けれどもいくらつとめても面白おもしろくならなかつた。時々とき/″\らして、御米およねかほぬすた。るたびに御米およね視線しせんたゞしいところいてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると今度は階段の下からまた一人、僕としては最も正視せいしするに耐えない「袴の無い若い職業婦人」が現われた。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
空中の怪魚の、断末魔だんまつまは、流石さすが豪胆ごうたんな帝国の飛行将校も、正視せいしするに、たえなかった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
白光はっこうの下に、その惨状さんじょう正視せいしし得る市民は、何人あることであろうか。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)