標的まと)” の例文
折助連の批評と皮肉のためによい標的まとであって、その標的に置かれた善良なる婦人たちのためには、実に不幸なことでありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それかあらぬか、同地どうち神明社内しんめいしゃないにはげん小桜神社こざくらじんじゃ通称つうしょう若宮様わかみやさま)という小社しょうしゃのこってり、今尚いまな里人りじん尊崇そんすう標的まとになってります。
ウルランド氏は、謹厳きんげんいやしくもせぬ模範的紳士として、社交界の物言う花からねらいうちの標的まととなっていた人物だった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女の顔はむしろわれわれ二人の利害を標的まとにして物を云ってるらしく真面目まじめに見えた。自分は下女の言葉を信ずれば信ずるほど母の事が気になった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お前達の標的まとも小銃も呪はれろ、地下のものと、其の神聖な休息とのことを少しも考へぬ、騒々しい生物いきものよ! お前達の野心も、計画も呪はれろ、『死』の聖殿みやの側で
近くに標的まとを定めて投げてみたが、なかなか中らなかった。それでも、隆吉は二三度あてた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それだのに右大将なども私を恨みの標的まとにしているそうだ。一人の求婚者に同情して与えてしまえばほかの人は皆失恋することになるのだから、うかと縁談が決められないのだよ。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しかしそれは推測を誤って居る。敵が鴎外と云う名を標的まとにして矢を放つ最中に、予は鴎外という名を署する事をめた。矢は蝟毛いもうの如く的に立っても、予は痛いとも思わなかった。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
たれが、そんなややこしい理論構説こうせつに耳をかそう。名分とは、民の直情に合致するものだ。大義とは、民のなかに持っている鉄則の信条じゃ。この標的まとはずしては、いくさも政治もうまく運ぶわけはない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
標的まとを外して撃った弾丸が、火柱の主にあたる筈がない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
標的まとと、標的まとの星」
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
これは大入場の観客の問題となったのみならず、士分の者や、町民の由緒ゆいしょと富裕とを持った者の桟敷に至るまでも、やはり注目の標的まととなりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
乱暴とより外に取りようのない一徹一図な点も非難の標的まとになった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)