梁山泊りょうざんぱく)” の例文
済州さいしゅう梁山泊りょうざんぱくのほとり石碣村せっかそんに住んで、日ごろは、江の浦々で漁師すなどりしているが、水の上の密貿易ぬけがいも、彼ら仲間では、常習とされている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし彼は他の玄洋社の諸豪傑連といささせんを異にしていた。その頃の玄洋社の梁山泊りょうざんぱく連は皆、頭山満を首領とし偶像として崇拝していた。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そろいも揃って気骨きこつ稜々りょうりょうたる不遇の高材逸足の集合であって、大隈侯等の維新の当時の築地つきじ梁山泊りょうざんぱく知らず
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
が、居候いそうろう四角な部屋を丸く掃き——掃除というのも名ばかり型ばかりで、男同士の住居は梁山泊りょうざんぱくそのままに、寝床は敷きっ放し、手まわりの道具や塵埃は散らかり放題。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、所好すきな貸本の講談を読みながら、梁山泊りょうざんぱく扈三娘こさんじょう、お孝が清葉をののしる、と洩聞もれきいて
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筒袖の単衣ひとえ着て藁草履わらぞうり穿きたる農民のおんなとおぼしきが、鎌を手にせしまま那処いずくよりか知らず我らが前に現れ出でければ、そぞろに梁山泊りょうざんぱくの朱貴が酒亭も思い合わされて打笑まれぬ。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「僕もそう思った。しかしまさか梁山泊りょうざんぱくの豪傑が店を出したと云うわけでもあるまい」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
これ実にいかなる無謀の匹夫黒旋風李逵りきといえどもその無謀には驚絶すべし。論者はよろしく梁山泊りょうざんぱくの世界を求めてこれに赴くべきなり。記憶せよ今日はこれ第十九世紀の文明自由の世界なることを。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
見ると、鸞帯らんたいの中には、かの短刀、かの十両、さらに書類袋しょるいたいのうちからは、梁山泊りょうざんぱく晁蓋ちょうがいから彼に宛てた書面まで現われてきた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて文壇の梁山泊りょうざんぱくと称えられた硯友社けんゆうしゃ、その星座の各員が陣を構え、塞頭さいとう高らかに、我楽多文庫がらくたぶんこの旗をひるがえした、編輯所へんしゅうじょがあって、心織筆耕の花を咲かせ、あやなす霞を靉靆たなびかせた。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「だって、あなたがおで下さらなくなっちゃ、梁山泊りょうざんぱくだって、仲間へ入れてはくれねえでしょうに。五百人が路頭に迷うじゃございませんか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梁山泊りょうざんぱく割符わりふでも襟に縫込んでいそうだったが、晩の旅籠にさしかかったうえ疲労つかれは、……六よ、怒るなよ……実際余所目よそめには、ひょろついて、途方に暮れたらしく可哀あわれに見えた。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)