しがら)” の例文
我が思ふ事に一錢の融通も叶ふまじく、いはゞ寶の藏の番人にて終るべき身の、氣に入らぬ妻までとは彌々の重荷なり、うき世に義理といふしがらみのなくば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
色も空も一淀ひとよどみする、この日溜ひだまりの三角畑の上ばかり、雲の瀬にべにの葉がしがらむように、夥多おびただしく赤蜻蛉あかとんぼが群れていた。——出会ったり、別れたり、上下うえしたにスッと飛んだり。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもことに一せん融通ゆうづうかなふまじく、いはゞたからくら番人ばんにんにておはるべきの、らぬつままでとは彌〻いよ/\重荷おもになり、うき義理ぎりといふしがらみのなくば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
橋板は破れ、欄干は朽ちて、うろぬけて、夜は狸穴から出て来て渡るものがありそうで、流れにしがらんだ真黒まっくろな棒杭が、口を開けて、落葉を吸った。——これ、まだ化けては不可いけない——今は真昼間まっぴるまだ。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我が思ふ事に一銭の融通もかなふまじく、いはば宝の蔵の番人にて終るべき身の、気に入らぬ妻までとは弥々いよいよの重荷なり、うき世に義理といふしがらみのなくば
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)