柴門さいもん)” の例文
そのまま書堂の前まで来ると、ここには今、柴門さいもんをひらいて、客を見送ったばかりの主がちょうどまだそこにたたずんでいた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日にげたる老翁ろうおう鍬を肩にし一枝いっしの桃花を折りて田畝でんぽより帰り、老婆浣衣かんいし終りて柴門さいもんあたりたたずあんにこれを迎ふれば、飢雀きじゃくその間をうかがひ井戸端の乾飯ほしいいついば
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
父は小坪に柴門さいもんを閉じ、城市の喧塵けんじんを避けて、多日しばらく浩然の気を養う何某なにがしとかやいえる子爵なり。その三郎年紀とし十七、才名同族を圧して、後来多望の麟麟児きりんじなり。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「コノ日、天気晴朗ニシテ、空ニ一点ノ雲無ク、すなはチ一瓢ヲ携ヘテ柴門さいもんヲ出ヅ……」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また的皪てきれきと春に照る梅を庭に植えた、また柴門さいもん真前まんまえを流れる小河を、垣に沿うてゆるめぐらした、家を見て——無論画絹えぎぬの上に——どうか生涯しょうがいに一遍で好いからこんな所に住んで見たいと
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
柴門さいもんを守るは
老境 (新字旧仮名) / 河井酔茗(著)
幽雅ゆうがな草堂の屋根が奥のほうに望まれ、潺湲せんかんたる水音に耳を洗われながら小径こみち柴門さいもんを入ると、内に琴を弾く音がもれ聞えた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうして、彼が、拙者の迎えぐらいで出て参るものですか。——君ご自身、彼の柴門さいもんをたたいて、親しくお召し遊ばさねばだめでしょう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしお暇だったら柴門さいもんを叩いてくれ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柴門さいもんをあけて
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)