札幌さっぽろ)” の例文
札幌さっぽろから出て来た友人は、上京した第一日中は東京が異常に立派に美しく見えるという。翌日はもう「いつもの東京」になるらしい。
破片 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
君は故郷に帰っても、仕事の暇々には、心あてにしている景色でもかく事を、せめてもの頼みにして札幌さっぽろを立ち去って行ったのだろう。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
今日学校で武田たけだ先生から三年生の修学旅行しゅうがくりょこうのはなしがあった。今月の十八日の夜十時でって二十三日まで札幌さっぽろから室蘭むろらんをまわって来るのだそうだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
面白い事に、この演説の勧誘家はその札幌さっぽろへ帰るや否や、自身とはげしい胃病にかかって、急に苦しみ出した。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その反抗はつねに私に不利な結果をもたらした。郷里くにから函館はこだてへ、函館から札幌さっぽろへ、札幌から小樽おたるへ、小樽から釧路くしろへ——私はそういう風に食をもとめて流れ歩いた。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
札幌さっぽろの天地は僕の青年時代に学問したところで、さなきだに第二の故郷としてしたわしいが、この慕わしき念をいっそう深からしむるものは、この小さき墓地ぼちである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
札幌さっぽろ行の列車は、函館の雑沓ざっとうをあとにして、桔梗、七飯なないいと次第に上って行く。皮をめくる様に頭が軽くなる。臥牛山がぎゅうざんしんにした巴形ともえなりの函館が、鳥瞰図ちょうかんずべた様に眼下に開ける。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ええ。まだいちども。札幌さっぽろ函館はこだてさえ数えるほどしか行ったことはないんですの。」
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
「いますぐなら、札幌さっぽろの伯母のところに寄っていると思うもんですから」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ひどくめかしこんで——とは波子があとで言ったことだが、札幌さっぽろあたりで作ったと覚しいよそ行きの洋装は、きたないこのバラックを訪ねるにしてはたしかに大仰おおぎょうで、顔もいやに厚化粧をしていた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
私が君に始めて会ったのは、私がまだ札幌さっぽろに住んでいるころだった。私の借りた家は札幌の町はずれを流れる豊平川とよひらがわという川の右岸にあった。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ところが午後六時にはこの低気圧はさらに深度を強めて北上し、ちょうど札幌さっぽろの真西あたりの見当の日本海のまん中に来てその威力をたくましくしていた。
函館の大火について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その提灯ちょうちんの火を見送っていると、だんだん小くなって札幌さっぽろビールの処で消えました。私はまた水を見る。するとはるかの川上の方で私の名を呼ぶ声が聞えるのです。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しきりに登って見たくなった。車中知人O君の札幌さっぽろ農科大学に帰るに会った。夏期休暇に朝鮮漫遊して、今其帰途である。余市よいちに来て、日本海の片影へんえいを見た。余市は北海道林檎りんごの名産地。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
僕が札幌さっぽろの郊外に一はかをもっている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
せっかくのおすすめではございますが、私は矢張り御馳走にはならずにって札幌さっぽろに帰るといたします。
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
かように義務心の強い男をそそのかして見当違の方角へ連れて行ったのは、全く余の力である。その代り哈爾賓を見て奉天へ帰るや否や、橋本は札幌さっぽろから電報をかけられた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
札幌さっぽろで君が私を訪れてくれた時、君には東京に遊学すべき道が絶たれていたのだった。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)