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木屑
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きくづ
(
何故だらう、これは
鋸で
挽く
所爲だ、)と
考へて、
柳の
葉が
痛むといつたお
品の
言が
胸に
浮ぶと、
又木屑が
胸にかゝつた。
そして中へ虱を入れると、削りとつた
木屑で穴をふさいでおいたのである。
多分土藏の修繕でもした時、
木屑が
紛れて殘つたのでせう。
と
思ひながら、
絶えず
拍子にかゝつて、
伸縮に
身體の
調子を
取つて、
手を
働かす、
鋸が
上下して、
木屑がまた
溢れて
來る。
與吉はとみかうみて、
肩のあたり、
胸のあたり、
膝の
上、
跪いてる
足の
間に
落溜つた、
堆い、
木屑の
積つたのを、
樟の
血でないかと
思つてゾツとした。
其も
道理よ、
血も
通はない、
脉もない、
魂のない、たかゞ
木屑の
木像だ。