月旦げったん)” の例文
彼や、彼の身近かなものが、よりより月旦げったんしたようにあの男の底も見届けたといきまいた。信頼は彼の家柄がさせるものであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そうして、かかることについても、作家の人物月旦げったんやめよ、という貴下の御叱正しっせいの内意がよく分るのですけれども私には言いぶんがあるのです。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それは浮浪人同様のもので、月旦げったんの席へは上せられない。かりに上せられても、一刷毛ひとはけで片づいてしまう。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ああ、ほんとにそうありたいものです!」ラズーミヒンの試みた最愛のロージャの月旦げったんに、堪え難い悩ましさを抱き続けたプリヘーリヤは、思わずこう叫んだ。
弟子たちの人物月旦げったんを集めた公冶長・雍也の両篇および弟子との交渉を多く語っている述而・子罕の両篇は、孔子の生活が弟子と密接に連関しているという理由で
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
川上の他に、藤沢浅二郎ふじさわあさじろうは新聞記者だとか、福井は『東西新聞』にいたがとか、壮士芝居の人物を月旦げったんしていることもあった。見物をたのまれて母なども行ったらしかった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
すなわち新聞雑誌に掲げられる月旦げったんとか人物評論とかあるいはいわゆる三面記事を見ると、ぼうはかくのごときことをなし、国賊であるとか、その肉をくらってもあきたらぬとか
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
我読む部分は雑録、歴史、地理、人物月旦げったん、農業工業商業等の一部なり。新体詩は四句ほど読み、詩は圏点けんてんの多きを一首読み、随筆は二、三節読みて出来加減をためす事あり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この書はまず袁世凱えんせいがい孫逸仙そんいっせんの人物月旦げったんに始まり、支那民族性への洞察から
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
過日は平三郎へ御托しの御細書下されかたじけなく拝見仕候。まずもって文履益〻御万福に御座成され欣然に存奉り候。したがつて拙宅無異御省慮下さる可く候。然れば老兄の月旦げったん上方かみがた筋宜しき旨□□□。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
では、わしが遠慮なく、列座の面々を月旦げったんするが、気を腐らしたもうなよ。——まず、荀彧には病を問わせ、喪家そうかひつぎとむらわしむべし。荀攸じゅんゆうには、墓を掃かせ、程昱ていいくには門の番をさせるがいい。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文学論は更に聞かれず、行くところ行くところ、すべて人物月旦げったんはなやかである。
更に月旦げったんに登るような著述もなかった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
はじめは、しかつめらしくプウシキンの怪談趣味について、ドオデエの通俗性について、さらに一転、斎藤実と岡田啓介に就いて人物月旦げったん、再転しては、バナナは美味なりや、否や、三転しては
喝采 (新字新仮名) / 太宰治(著)