智能ちのう)” の例文
彼は意志の方面、これ智能ちのうの方面で、この両方面における遺伝的系統をたずぬるに、抽斎の前途は有望であったといってもかろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
人は特攻隊を残酷だというが、残酷なのは戦争自体で、戦争となった以上はあらゆる智能ちのう方策を傾けて戦う以外に仕方がない。
特攻隊に捧ぐ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
疑問ぎもんはでたが、そうヒョッと、考えただけで、これは蛾次郎の智能ちのうではけそうにもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にもかくにも非凡ひぼん智能ちのう遠大えんだい目的もくてきとをいうすることなれば、何時いつ意外いぐわい方面はうめんより意外いぐわい大功績だいこうせきもたらしてふたゝ吾人ごじん眼前がんぜんあらはれきたるやもからず、刮目くわつもくしてきなり。
期待していた宗教的な清潔な雰囲気ふんいきなどは、どこにも無い。クラスには七十人くらいの学生がいて、みんな二十歳前後の青年らしいのに、智能ちのうの点に於ては、ヨダレクリ坊主ぼうずのようである。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
刺戟に応じて智能ちのうが多方面に働き易く習性付けられた青年の復一が、専門の中でも専門の、しかも、根気と単調に堪えねばならない金魚の遺伝と生殖せいしょくに関してだけを研究することは自分の才能を
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ところが、蛾次郎も、近ごろはせんのうちより、だいぶ強くなってきた。もともと彼は石投げの天才であって、智能ちのうの点はともかくも、糞度胸くそどきょうがつくとなると、どうして、容易よういにあなどりがたい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)