日子にっし)” の例文
かれこれしておりましたときに、病気にかかり、また日子にっし定限きまりがありまして、事情再びロンドンに来ることができませなんだ。
妖怪談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
彼はこの「私はあなたを愛する」というたった一言を伝える為に、たっぷり三ヶ月の日子にっしついやしたのです。ほんとうにうその様な話しです。
日記帳 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
趙は進退に窮して旅館へ入り、故郷へ引返そうか、仕官の口を探そうかと思って迷っているうちに、数ヶ月の日子にっしが経った。
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
浅井氏いわく場所広くして遠近さだかならずもしこの画を画とせんとならば更に一週の日子にっしを費して再び渋川に往けと。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかしわたしはこれがために幾多の日子にっしと紙料とを徒費したことをいていない。わたしは平生へいぜい草稿をつくるに必ず石州製の生紙きがみを選んで用いている。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ところが時偶々たまたまクリスマスの季節にあたったために、手紙の配達がおくれ、僅か四百マイルを隔てたスミス博士の手に入るまでに、十日以上の日子にっしを要した。
あえて短い日子にっしではなかったが、こう云う事には極めて疎い自分にはこの家の家庭の過去現在について知り得られた事は至って僅かで、またいて知りたいと思いもしなかった。
雪ちゃん (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
猛烈の雨中突進、遮二無二しゃにむに登りつめれば中禅寺の八丁平なり。ここから華巖けごんの滝壺を見に行った。この滝壺道というのは、五郎平じいが十三年の日子にっしを費やして独力造り上げた道である。
眩暈めまいと激烈なる頭痛とに悩まされて、石工らの倒るるあり、またほどなく落成せんとたのしめる前日に、暴風雨の襲来にい、数十日の日子にっしと労力とを費してはこげたる木材を噴火坑内に吹き飛ばされ
それでも一八三一年の十二月二十七日にイギリスを出帆して、南北アメリカをめぐり、更にオーストラリヤ方面に向い、その間に五年の日子にっしを費して、一八三六年の十月二日にようやく帰って来ました。
チャールズ・ダーウィン (新字新仮名) / 石原純(著)
社の方ではよろしいと云って相応の日子にっしを与えてくれました。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余分の日子にっしと防寒具の用意をして初冬に登るべきである。
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
と知れば、ろう日子にっしをいとわずに求めた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
約一ヶ月の日子にっしを之に費している。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
年の暮の事で今年も例のように忙しいので、まだ十三、四日の日子にっしを余して居るにもかかわらず、新聞へ投書になった新年の俳句を病牀で整理して居る。
ランプの影 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
それがどういう原理にもとづくかということを、ごく抽象的に説明してあるに過ぎない。その抽象原理を具体化するために、わしは丸三年の日子にっしを費している。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
また、変貌の完全不完全は、犯人がどれだけの費用とどれだけの日子にっしを費しうるかによって定まる。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
更に一歩を進むるがためにあに三十年の日子にっしつべきや、談林勃興後十年ならずして、談林は既に衰へ、人々新を競ひ奇を争ふの極、日進月歩、文運復興の機運は漸く熟せり、延宝の末年、其角
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)