数珠ずず)” の例文
旧字:數珠
そうしていきなり私の前に立ちはだかって、いくらか色さえお変えになりながら、傍らにあった香や数珠ずずを投げ散らかされ出した。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
袈裟けさもなく、法衣ころももなく、数珠ずずさえも手にしていない代り、前の人とついな団扇を持って、はたはたと路傍の花を撫でながら
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
形ばかりの位牌いはい二つ——住蓮と安楽房の霊に香華こうげをそなえて、水晶の数珠ずずを手にかけたまま美しい死をとげていたのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
骨組みのたくましい、筋肉が一つびとつ肌の上から数えられるほど、脂肪の少い人で、牙彫げぼりの人形のような顔にみをたたえて、手に数珠ずずを持っている。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、寺へ駈け込んで、一夜に髪をりこぼち、きのうの具足太刀を、数珠ずず法衣ころもに着かえて、どこまでも命を保とうとした醜類中のしゅうもあったが
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此頃は女だっても数珠ずずをさげ経を手にしていない者はない位だと人々の語るのを聞き
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
範宴のすがたを見ると、白絹の法衣ほうえ白金襴しろきんらん袈裟けさをかけ、葡萄ぶどうのしずくを連ねたような紫水晶の数珠ずずを指にかけていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其処に香や数珠ずずや経などが置かれてあるのをあの方は御覧なさると
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
また、鉢のないかぶとの八幡座だの、ふところに入るぐらいな豆厨子まめずしだの、数珠ずずだの旗竿だの、大きな物では、蝶貝や金銀で見事にちりばめた鞍などもあった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まわりのやいばは穴から水の噴くように、彼の虚へ向って衝いて出るはずであるが、そういう者もなく、数珠ずずのような沈黙に縛られている大勢のうちから
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御葉山みはやま御廟ごびょうのほうへ向って、われを忘れて、数珠ずずをあわせ、仏の弟子であるよろこびに声を出して念仏していた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その、さり気なさは、まるで遊山ゆさんの誘いかのようで、手くびの数珠ずずが、美しい指に懸け直されただけでしかない。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口に名号みょうごうをとなえ、指に水晶の数珠ずずをツマぐっているかと見えたが、やがて、寂阿じゃくあ入道菊池武時の首と隣して、死すとも父子一座として寄り添っているかのような
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、老母は武蔵の恐縮する前へ、手頸てくび数珠ずずへ顔がつくほど低い辞儀をして謝り入るのであった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半瓦と並んだお杉は、たもとから、数珠ずずをとり出し、もう無想になって、普門品ふもんぼんとなえていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、白帷子しろかたびらを着て、えりに大きな数珠ずずを懸けている無法者の老人が、前へ進んで名乗った。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と求め、その袈裟を掛け、手に数珠ずずを持ってから、介と頼春へ、こういいつけた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いい人間であることにまちがいはないのだよ。あのおばばでも、清水堂へ日参するというじゃあないか。観音さまへ数珠ずずをさげている間は、観音さまに近いおばばになっているわけだからの」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又八は、法衣ころもを解き、数珠ずずと共に、光悦の手に託して
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
快川も、数珠ずずをまとった指を、下について
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、数珠ずずをあげて催促した。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数珠ずずの音がした。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)