まがい)” の例文
「鼈甲牡丹の絢爛さ! なるほど、うまい形容だな。だが、まがいの鼈甲牡丹なら三四十銭で、其処そこらの小間物屋に売っていそうですね。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
大きなまがい鼈甲縁べっこうぶちの眼鏡をかけているが、三人とも無言のまま大急ぎでツンボ・コートを通抜けて、広い面積に投散らしてある鉄材の切屑をグルリとまわって
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
煙管きせる突込つっこんで、ばったり置くと、赤毛氈あかもうせんに、ぶくぶくして、まがい印伝の煙草入は古池を泳ぐていなり。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よくよく見ると飛行船の部屋の装飾でまがいものう篠山博士の飛行船月宮号の附属品だ。
月世界競争探検 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
さて雪国の山家とて、けたうつばり厳丈がんじょうな本陣まがい、百年って石にはなっても、滅多に朽ちるうれいはない。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
瘠せっぽちの三好は神経質らしく、まがい鼈甲縁べっこうぶちの眼鏡をかけ直して云った。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
丘の周囲まわりを、振袖の一行——稚児髷ちごまげに、友染ゆうぜんの袖、たすきして、鉄扇まがいの塗骨の扇子おうぎを提げて義経袴よしつねばかま穿いた十四五の娘と、またおなじ年紀としごろ……一つ二つは下か、若衆髷わかしゅまげに、笹色の口紅つけて
人形使 口上まがいに、はい小謡こうたいの真似でもやりますか。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)