かゝ)” の例文
さはいへまた久留米絣をつけ新らしい手籠てかごかゝえた菱の實賣りの娘の、なつかしい「菱シヤンヨウ」の呼聲をきくのもこの時である。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
独りで嬰児あかんぼかゝへて居る人とか——まだ何処へもとつがずに長唄の稽古に通つて居る人とか——医者のうちに雇はれて、立派にして町を歩いて居る人とか——
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
右手を既にたもとを少し掲げて、挿し入れるやうに用意してゐて呉れる夫人の腋下から、かゝへるやうに背へ当てた。
私の社交ダンス (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
胡座あぐらをかいた股の間へ手焙てあぶりをかゝへ込んで、それでも足らずにぢり/\とにじり出しながら
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いづれも学問する児童こどもらしい顔付の殊勝さ。弁当箱を振廻して行くもあれば、風呂敷包を頭の上にせて行くもある。十露盤そろばん小脇にかゝへ、上草履提げ、口笛を吹くやら、唱歌を歌ふやら。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
木曾きそ檜木ひのき材木ざいもくとして立派りつぱなばかりでなく、赤味あかみのあるあつかは屋根板やねいたかはりにもなります。まあ、あの一トかゝへも二擁ふたかゝへもあるやうな檜木ひのきそばへ、お前達まへたちれてつてせたい。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
丁度そこへ風呂敷包をかゝへ乍ら、戸を開けて入つて来たのは銀之助であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『先生、一つ流しませう。』と丑松は小桶こをけかゝへて蓮太郎の背後うしろへ廻る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)