たなぞこ)” の例文
足はきいろい皮から爪の先までが脳病の薬になるといって特別のスープに取るし、足の先のたなぞこの肉は支那料理で珍重する上等の御馳走だ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この一番にて紳士の姿は不知いつか見えずなりぬ。男たちは万歳を唱へけれども、女の中にはたなぞこの玉を失へる心地ここちしたるも多かりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
瑠璃光は我知らずたなぞこを合わせて眼に見えぬ佛を拝んだ。そうして、胸の奥で次の言葉をつゞけざまに繰り返した。
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
女はさすがに身を恥じて、二つの乳房をたなぞこに隠し、八方から投げかけられる視線を痛そうに受けてうずくまりました。
語り畢る時、老公はたなぞこを撫して、側に立ちて笑ひ居たる姫に向ひ、いかにをかしき話ならずやと宣給へり。
霜じみの一つかやの実押し据ゑて何ぞこの子があつきたなぞこ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山行きて零れし朴のたなぞこに露置くこくとなりにけるかな
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
やせ細りし手にわが小さきたなぞこを握りしめ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
子ろのたなぞこにしては ままごとの伴侶とも
独楽 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
鋭刄すぐたなぞこの端に當りて肉に入り
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
たなぞこにまりの空虚を握り得し
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
ただ君が手のたなぞこ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いざ、昔のよしみに拍手し給へ。われも應援すべしとて、先づ激しくたなぞこを打ち鳴しつ。
落ちて来るところをたなぞこで受けると、これがそのまま銭占ぜにうら
蛇腹じやばらに似たるたなぞこの暗き彫刻ほりもの
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
或るときは共に舟にさをさして青海原を渡り、烟立つヱズヰオの山に漕ぎ寄せつるに、山はまたく水晶より成れりと覺しく、巖の底なる洪爐こうろ中に、けぶり渦卷うづまき火燃え上るさまたなぞこに指すが如くなり。
左のたなぞこの脈つ上に
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)