挙動ふるま)” の例文
旧字:擧動
おとらは往返いきかえりには青柳の家へ寄って、姉か何ぞのように挙動ふるまっていたが、細君は心の侮蔑をおもてにも現わさず、物静かに待遇あしらっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
妻子の葬儀には母もいもとも来た。そして人々も当然と思い、二人も当然らしく挙動ふるまった。自分は母を見ても妹を見ても、普通の会葬者を見るのと何のかわりもなかった。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そして何時いつの間にか魂が腐ってしまい、昨夜お春に対して挙動ふるまったような邪悪無情な事をするようになった呉羽之介に相当する獰悪どうあくな表情を絵姿の上に加えたのであります。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
生花いけばな、裁縫、諸礼、一式を教えられ、なお男子の如く挙動ふるまいし妾を女子らしからしむるには、音楽もて心をやわらぐるにかずとて、八雲琴やくもごと、月琴などさえ日課の中に据えられぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
中食ちゅうじきはテストフてい料理店りょうりてんはいったが、ここでもミハイル、アウエリヤヌイチは、頬鬚ほおひげでながら、ややしばらく、品書しながき拈転ひねくって、料理店りょうりやのように挙動ふるま愛食家風あいしょくかふう調子ちょうしで。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
妙な廻り合せで、上草履一つ買えずにいる笹村は、もと下宿にいた時のように気ままに挙動ふるまうことすら出来なかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ある時は少年のように朗らかに挙動ふるまい、朝の森に小禽ことりさえずるような楽しさで話すのだったが、一々こたえもできないような多弁の噴霧を浴びせかけて、彼を辟易へきえきさせることがあるかと思うと
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)