指紋しもん)” の例文
「もう一度、この部屋をねん入りに捜査そうさしてくれたまえ。兇器きょうき指紋しもん証拠物件しょうこぶっけん、死者の特別の事情に関する物件など、よくさがしてくれたまえ」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「触っちゃいけない。実にハッキリした指紋しもんがついているんだ。これはもう一つの指紋と一緒に写真に撮って、今頃は署の方で現像が出来ている時分です」
デ・クインシイが「阿片アヘン喫煙者の懺悔ざんげ」は、さきに佐藤春夫さとうはるを氏をして「指紋しもん」の奇文を成さしめたり。
一つのさかずきからは、ハッキリした被害者ひがいしゃ指紋しもん検出けんしゅつされたが、ほかの一つには、なにかでふいたものとえて、全然ぜんぜん指紋しもんがついていない。しかしこれで大体だいたい推測すいそくはついた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
なにしろ可恐おそろしおほきが、しろ指紋しもん大渦おほうづいてるのだとおもひました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人々は止むを得ず錠前を毀して土蔵の中へ這入はいることにしたが、僕が注意するまでもなく、彼等は錠前の指紋しもんのことを気附いていて、錠前そのものには触れず
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、老人ろうじんんだのをとどけてから、自分じぶんさかずきのウィスキイをびんにもどし、かつ指紋しもんをぬぐいとつておいて、悠々ゆうゆうと……もしくはいそいで、この立去たちさつたのである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
彼は日頃、新聞の三面記事などで、指紋しもんというものの重大さを学んでいた。寧ろ実際以上に誇張して考えていた程である。今まで握っていたあの拳銃ピストルには、彼の指紋が残っているに相違ない。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)