だい)” の例文
「そんぢやぢい砂糖さたうでもめろ」とおつぎは與吉よきちだい籰棚わくだなふくろをとつた。寡言むくち卯平うへい一寸ちよつと見向みむいたきりでかへつたかともいはない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
漸くに二人し事なれば吉之助にせる物なく其夜はみぎの三布蒲團を吉之助に着せ夫婦は夜中やちう辻番つじばんだいて夜をあかしけれども是にては主人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
浅間あさましい、……きまりが悪い。……由紀は、いまは活きていられない。——こうしていても、貴方(とはじめて顔を振向けて、)私のだいている顔も手も皆見える。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一体自分はまだ体が衰えていないで、どんな快楽をも受ける事が出来る。音楽を聴いて面白がる事も出来る。酒を飲めばうまい。可哀かわゆらしい娘を見ればひざの上にだいてキスをして遣りたくなる。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
背中から四肢にかけ、縦横に布や刺繍ししゅうや金属で装ってあるらしい象の体は、丸く縛りすくめられ、その前肢に背をもたせ、ダラリと下った鼻を腕でだいた一人の黒ン坊が眠って居るのもうすうす判る。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)