抛出なげだ)” の例文
それだから犬の概念は頭の中にあるだけにもかかわらず、その価値は頭以外すなわち非我の世界に抛出なげだされて始めて分るものであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少女の挽物細工ひきものさいくなどかごに入れてりに来るあり。このお辰まだ十二三なれば、われに百円づつみ抛出なげださするうれいもなからん。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
醜男面ひょっとこづら假面めん無用むようぢゃ!(と假面を抛出なげだしながら)れが皿眼さらまなこで、このともないつらやがらうとまゝぢゃ! 出額でこすけあかうなるばかりぢゃわい。
甲田は何かの拍子で人と爭はねばならぬ事が起つても、直ぐ、一心になるのが莫迦臭いやうな氣がして、笑はなくても可い時に笑つたり、不意に自分の論理を抛出なげだして對手あひてを笑はせたりする。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
痴者ちしやが衣服の焼け穴をいぢるやうに、猿が疵口きずくちを気にするやうに、段〻と悪いところを大きくして、散〻な事になつたが、いやに賢く狡滑かうくわつなものは、自分の生命を抛出なげだして闘ふといふことをせずに
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
甲田は何かの拍子で人と争はねばならぬ事が起つても、直ぐ、一心になるのが莫迦臭ばかくさいやうな気がして、笑はなくても可い時に笑つたり、不意に自分の論理を抛出なげだして対手あひてを笑はせたりする。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
まへこゝろ虚僞いつはりがなく、まこと夫婦めをとにならうなら、明日あす才覺さいかくして使者つかひをばげませうほどに、何日いつ何處どこしきぐるといふ返辭へんじをしてくだされ、すれば、一しゃう運命うんめいをばおまへ足下あしもと抛出なげだして