手詰てづめ)” の例文
あなたは三十三間堂も御嫌いか知らないが、私に聞かせるのだからいっしょに行って下すってもいでしょうと手詰てづめの談判をする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その非常手段というのは、ここへ逃げ込んだのが縁、何者か知らないが当家の主人を叩き起し、手詰てづめの談判をしてみるのだ
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今夜に迫る手詰てづめの金、とても生きては居られないから自害をするとだまかして、無心を云って見ようかと思うんざます
御当人のお代さんはほとん自暴やけの気味で大原君が婚礼を承諾せんければ発狂もし兼ねまじき有様ありさまだし、叔父も叔母も大原君の母親も手詰てづめの談判で大原君の決心を促すし
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何と就かずに段々言延いひのばして御座いましたのを、決然いよいよどうかと云ふ手詰てづめはなし相成あひなりましたので。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すなわち西洋から薩摩藩に買取かいとった船が二艘あるその二艘の船を談判だんぱんの抵当に取ると云う趣意しゅいで、桜島の側に碇泊ていはくしてあった艘の船を英の軍艦が引張ひっぱって来ると云う手詰てづめの場合になった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
たちまち内務省からは風俗壊乱、発売禁止、本屋からは損害賠償の手詰てづめの談判、さて文壇からは引続き歓楽に哀傷に、放蕩に追憶と、身に引受けた看板のきずに等しき悪名あくみょうが、今はもっけのさいわい
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ところで、この二十一日は亡父の七回忌で、どうでも法要につかねばならねえという親類一統の手詰てづめ強文章こわぶみ。それで渋々、帰郷することにしたが、それにつけても、ひとりでは所在がない。
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その挙動は、主人をして退引のっぴきさせぬ手詰てづめ催促さいそくに見えます。ここに至るとお君はどうしても、すべての危険を忘れてムク犬を信用せねばならなくなりました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
様子を聞かしてくんなまし、誠に済みまへんことだが、小三さんがお金を才覚してよこせという手詰てづめに成り、罪のようだが若旦那のためにはかえられまへんから、丈助どんに言附けて
この上は兵力を以て京都へ推参して手詰てづめの歎願をするほかはないと、久坂玄瑞くさかげんずい、来島又兵衛、入江九一の面々が巨魁きょかいで、国老の福原越後を押立てて、およそ四百人の総勢で周防すおうの三田尻から
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)