所狭ところせま)” の例文
旧字:所狹
道を転じて静緒は雲帯橋うんたいきようの在るかたへ導けり。橋に出づれば正面の書院を望むべく、はや所狭ところせまきまで盃盤はいばんつらねたるも見えて、夫は席に着きゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
になえるかごは覆りて、紙屑、襤褸切ぼろきれ硝子がらす砕片かけなど所狭ところせまく散乱して、すねは地をり、手はくうつかみて、呻吟しんぎんせり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其までは宛然まるでう、身体からだまつわつて、肩を包むやうにして、侍女こしもとの手だの、袖だの、すそだの、屏風びょうぶだの、ふすまだの、蒲団ふとんだの、ぜんだの、枕だのが、あの、所狭ところせまきまでといふ風であつたのが
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
したいた白毛布しろけつとうへには、所狭ところせまのみかんなちらかり放題はうだい
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)