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所狭
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ところせま
道を転じて静緒は
雲帯橋の在る
方へ導けり。橋に出づれば正面の書院を望むべく、はや
所狭きまで
盃盤を
陳ねたるも見えて、夫は席に着きゐたり。
担える
籠は覆りて、紙屑、
襤褸切、
硝子の
砕片など
所狭く散乱して、
脛は地を
蹴り、手は
空を
掴みて、
呻吟せり。
其までは
宛然恁う、
身体へ
絡つて、肩を包むやうにして、
侍女の手だの、袖だの、
裾だの、
屏風だの、
襖だの、
蒲団だの、
膳だの、枕だのが、あの、
所狭きまでといふ風であつたのが
下に
敷いた
白毛布の
上には、
所狭く
鑿も
鉋も
散かり
放題。