憫然あはれ)” の例文
取らん事思ひもらず今云事のいつはりにもあるまじしうの爲の出來心にて盜みに來りしと正直しやうぢきに云ふ事の憫然あはれなれば此金を汝に與へん間主人しゆじん難儀なんぎすくひ妻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たかへる小鳥の如く身動みうごき得為えせで押付けられたる貫一を、風早はさすがに憫然あはれと見遣りて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かんなを持つては好く削らんことを思ふ心の尊さは金にも銀にもたぐへ難きを、僅に残す便宜よすがも無くて徒らに北邙ほくばうの土にうづめ、冥途よみぢつとと齎し去らしめんこと思へば憫然あはれ至極なり、良馬しゆうを得ざるの悲み
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
忌々いま/\しく思ひ仁田村の八と云ふ獵人かりうどたく引越ひつこしる處へ手先のかう八と云ふ者此事を嗅付かぎつ郡代役所ぐんだいやくしよへ引行入牢させけるをあに九郎右衞門聞こみ流石さすが憫然あはれに思ひ内々ない/\取繕とりつくろひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
着替きかへもせず居たりしはつたなき運と知られけり茲に原町の家主に平兵衞へいべゑと云ふ者あり近邊きんぺんにて評判の如才じよさいなき男にて至つて慈悲じひふかく人をあはれみけるが平生へいぜい喜八の正直なる心をかんじ何時も憫然あはれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)