感触かんしょく)” の例文
旧字:感觸
薄暗い神殿しんでんの奥にひざまずいた時の冷やかな石の感触かんしょくや、そうした生々しい感覚の記憶の群が忘却ぼうきゃくふちから一時に蘇って、殺到さっとうして来た。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
……ほんのつかたち現われたわたしの初恋はつこいのまぼろしを、溜息ためいき一吐ひとつき、うら悲しい感触かんしょく一息吹ひといぶきをもって、見送るか見送らないかのあのころ
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
女房に古新聞と洗面器を持って来させ、畳の上に腹這はらばいになったまま、苦しまぎれに、げいげいやっていると、肩のあたりに、やわらかい感触かんしょくをおぼえ
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
別に感触かんしょくを害しているようなものもないらしいので、こちらの洒落しゃれを皆寛大に理解してくれる人々だと分った。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
子どもらにとっては、ただ手足をふれているだけで、じゅうぶん満足のできる、こころよい感触かんしょくであった。水はここではじめて人の手にふれ、せきとめられてにごった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
彼のおにをもあざむくばかりのかおが、ニコニコ笑うのをみると、ぼくは股の上の彼の感触かんしょくから、へんに肉感的センシュアルなくすぐッたさを覚え、みんなにならって、やはり三番の沢村さんのひざ
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
小初はしなやかな胴を水によじり巻きよじり巻き、くまで軟柔なんじゅう感触かんしょくを楽んだ。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ジナイーダのキスの感触かんしょくも、顔一面にありありと残っていたので、わたしは興奮に身震みぶるいしながら彼女の言葉を一つ一つ思い浮べたり、自分の思いがけない幸福を
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ランドセルはロボットのような感触かんしょくで、しかし急激きゅうげきなよろこびで動いた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)