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惘然
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もうぜん
ふりがな文庫
“
惘然
(
もうぜん
)” の例文
離れるものは
没義道
(
もぎどう
)
に離れて行く。未練も
会釈
(
えしゃく
)
もなく離れて行く。玄関から座敷に引き返した小夜子は
惘然
(
もうぜん
)
として、
椽
(
えん
)
に近く坐った。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二度目の時彼は、年取った羊のように
惘然
(
もうぜん
)
としてその衝突をながめていた娘の方へ身をかがめて、ほとんど冷静な微笑をたたえて言った。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
きっぱりと割りきったものである、兵庫はうむと
呻
(
うめ
)
き、しばらくは
惘然
(
もうぜん
)
と源七郎をみつめていた、そしてやがて大きく頷いた。
青竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
博士と四人の漁夫は、ひと塊りになって、ややしばらくの間
惘然
(
もうぜん
)
とそれを眺めていた。咄嗟に、何が始まりかけているのか理解することができなかった。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
スイッチを入れてみると、忽ち狂おしげな軍歌や興奮の声が轟々と室内を
掻
(
か
)
き乱した。彼は
惘然
(
もうぜん
)
として、息を潜め、それから氷のようなものが
背筋
(
せすじ
)
を貫いて走るのを感じた。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
▼ もっと見る
机に向かって書物を
披
(
ひら
)
いたまま
惘然
(
もうぜん
)
ともの思いに
耽
(
ふけ
)
っていた太宰は、「お客来でございます」という妻の声でわれに返った
日本婦道記:尾花川
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は
立
(
た
)
ち
上
(
あ
)
がつた。
惘然
(
もうぜん
)
として又
歩
(
ある
)
き出した。少し
来
(
き
)
て、再び平岡の小路へ這入つた。夢の様に軒燈の前で
立留
(
たちどま
)
つた。
守宮
(
やもり
)
はまだ一つ所に
映
(
うつ
)
つてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
無慈悲なるもの換言すれば人を
愚昧
(
ぐまい
)
にするところのものを、最も多く含有するこの種の刑罰の特色は、一種の
惘然
(
もうぜん
)
たる変容によってしだいに人を野獣に化せしむることである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そう思いながら、聞くともなしに
惘然
(
もうぜん
)
としていると、「登野村」というのが耳についた、菊枝はどきっとして耳を澄ました。
日本婦道記:不断草
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
死ぬ迄三千代に対して責任を負ふと云ふのは、
負
(
お
)
ふ目的があるといふ迄で、
負
(
お
)
つた事実には決してなれなかつた。代助は
惘然
(
もうぜん
)
として
黒内障
(
そこひ
)
に
罹
(
かゝ
)
つた人の如くに自失した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが茂七が妻に死なれ、おせんを抱えて
惘然
(
もうぜん
)
としているのをみて、自分からすすんでいっしょになったのである。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
死ぬまで三千代に対して責任を負うと云うのは、負う目的があるというまでで、負った事実には決してなれなかった。代助は
惘然
(
もうぜん
)
として
黒内障
(
そこひ
)
に
罹
(
かか
)
った人の如くに自失した。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
惘然
(
もうぜん
)
として、飛び去った鳥のあとを追想するような、つかみどころのないはかない気持で日を送っていった。
日本婦道記:墨丸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
惘然
(
もうぜん
)
として煙草の煙を眺めている。恩賜の時計は一秒ごとに約束の履行を
促
(
うな
)
がす。
橇
(
そり
)
の上に力なき身を託したようなものである。手を
拱
(
こま
)
ぬいていれば自然と約束の
淵
(
ふち
)
へ
滑
(
すべ
)
り込む。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
銕太郎は
惘然
(
もうぜん
)
とした眼つきで、妻が机の上へ薊の花を置く動作を見、そして、縁側のほうへ出てゆくのを見た。
薊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
惘然
(
もうぜん
)
として又歩き出した。少し来て、再び平岡の小路へ這入った。夢の様に軒燈の前で立留まった。守宮はまだ一つ所に映っていた。代助は深い
溜息
(
ためいき
)
を洩らして遂に小石川を南側へ降りた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
……小松が帰っていったあと、縫物を膝の上に置いたまま、弥生はやや久しいあいだ
惘然
(
もうぜん
)
と
刻
(
とき
)
をすごした。
日本婦道記:風鈴
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
……秀之進は云いようのない感動にうたれ、自分もその海景のなかに溶け入ってしまったもののように、砂丘に腰をおろしたまま
惘然
(
もうぜん
)
と時の経つのを忘れていた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それでその校閲にはもっとも念をいれ、一字一句のすえまで吟味を加えているのだが、この四五日はなんとなくつかれ易く、ともすれば
惘然
(
もうぜん
)
と筆をやすめていることが多くなった。
日本婦道記:松の花
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おせんは痴呆のように
惘然
(
もうぜん
)
として、この人々といっしょに動いたり停ったりしていた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
心はひどく動揺していた、——ふしぎだ、
慥
(
たし
)
かに似ている、正二郎さまの幼な顔にそっくりだ。部屋へはいると、おなつは崩れるようにそこへ坐り、暗い壁のひとつところを
惘然
(
もうぜん
)
と見まもった。
契りきぬ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
鍋山又五郎は
惘然
(
もうぜん
)
と立ったままだった。
雨あがる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
幹太郎は
惘然
(
もうぜん
)
と思いあぐねた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
幹太郎は
惘然
(
もうぜん
)
とそこへ坐った。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
頼母は
惘然
(
もうぜん
)
として云った。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“惘然”の意味
《名詞》
呆気にとられ唖然とするさま。
(出典:Wiktionary)
惘
漢検1級
部首:⼼
11画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“惘然”で始まる語句
惘然自失