ぼう)” の例文
△「わしはその大和路の者であるが、少し仔細あって、えゝ長らく江戸表にいたが、故郷こきょうぼうがたく又帰りたくなって帰って来ました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あなたも、いずれお死ににならなければならないでしょうし、わたしも故郷こきょうぼうじがたしで、このへんをもういちど見ておきたいとおもったのです。
物我相ぼうじ、物が我を動かすのでもなく、我が物を動かすのでもない、ただ一の世界、一の光景あるのみである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
よく見ると、その金ぶち眼鏡のにやけた男が、まごうかたなき、私、ええ、この私だったので、かれ、あのときのうれしさはぼうじがたいと、いまでもよく申しています。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それはやがて剣に理を失った左膳と、恋に我をぼうじ果てたお藤とのこころの姿でもあった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
復讐の鬼と化した私は、前後をぼうじ、昼といわず夜といわずちまたを走り廻った。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
流転るてんそうぼうぜむと、心のかわきいとせち
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
それにお尋ねの風聞も大抵抜けた様子だから故郷ぼうがたしのたとえで、二人一緒で江戸へき、どんな暮しでもしようじゃないか、懐に金も有ることだからと
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
按摩になってと思いまして入ったんでございますが、漸々だん/\銭が無くなっちまいましたから、江戸へ帰っても借金はあり、と云って故郷こきょうぼうがたく、何うかして帰りてえが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其の翌年よくとしの九月産み落したのは此処に居ります此の四萬太郎しまたろうという忰で、これはお前とは敵同士かたきどうしの原丹治の子でございます、それから故郷ぼうがたしとは宜く云ったもので
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
っかさまは芝居でも御見物なすってお帰りになる事だろうから、中々一ト月や二タ月は故郷こきょうぼうがたしで、あっちこっちをお廻りなさるから、急にはお帰りになるまいと存じましたに
故郷ぼうじがたく詫言わびごとをして帰ろうと江戸へ参って自分の屋敷へ来て見ると、改易と聞いて途方に暮れ、こゝと云う縁類えんるいも無いからうしたらよかろうと菩提所ぼだいしょへ行って聞くと、親父は突殺され
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)