微衷びちゅう)” の例文
何とぞ、微衷びちゅうみとり賜わって、お市の方様、ならびにお子様のおん身は、この戦場の外へお放ちくださいますように……。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あわれ願わくば微衷びちゅうにめでて弟子の一人にお加えくだされ、幻妙不思議の忍術の一手お教え置かれくださいますよう、常陸ひたちお願い申し上げます
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
代表し以て一大凱旋祝賀会を開催し兼て軍人遺族を慰藉いしゃせんが為め熱誠これを迎えいささか感謝の微衷びちゅうを表したくついては各位の御協賛を仰ぎ此盛典を挙行するのさいわい
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
只今の御沙汰によれば、お上に置かせられても、我々の微衷びちゅうをお酌取くみとり下されたものと存じます。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「兎に角、僕等は僕等で微衷びちゅうを表したいんだが、んなものだろう?」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
義卿三十、四時すでに備わる、また秀また実、そのしいなたりとその粟たると吾が知る所にあらず。同志の士その微衷びちゅうを憐み継紹けいしょうの人あらば、すなわち後来の種子未だ絶えず、みずから禾稼の有年に恥じざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
さすがの我もいささか疲労しかつはまたこの上ひんには礼を失するに至らん事をおそれせめてわが芝居道熱心の微衷びちゅうをだに開陳し置かばまた何かの折宿望を達するよすがにもなるべしと長々しき論文一篇を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
微衷びちゅうの伝奏を仰ぎ、同時に、黄金百枚、絹二百匹、綿三百、米千五百俵の献上を願い出て戻って来たところ、忽ち
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
周布一派の老練家が委曲周旋しゅうせん、またその微衷びちゅうを諒すべきものあり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「天の与えだ。咫尺しせきへ進んで、直々じきじきに、われらの微衷びちゅうとみゆるしを、おすがりしてはどうだろう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「で、何とぞ、千蛾の微衷びちゅうをおくみとり遊ばして娘月江のこと、くれぐれお力ぞえ賜わりますよう」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとへ身はして土中の白骨となるとも、殿にして微衷びちゅうをわすれ給はず、おこころのうちに、ふとだにも御想起くださるなれば、重治の魂魄こんぱくは、いつなんどきたりとも
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古鎧ふるよろい錆槍さびやり一筋ひとすじ持って駈けつけ参りました、微衷びちゅうをおくみとり下さって、籠城の一員にお加えねがいとうござる。烏滸おこながら一死を以て、亡君の御恩におこたえ申したいので……
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さきに、しばしば、書状にこめて、定房の微衷びちゅうを、お願い申しあるが」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ありがたいおことばですが、臣が先帝よりみなしごをたのむぞとの遺詔いしょうを拝しましてからは、臣の微衷びちゅうは、それを果さぬうちは、眠るとも安まらず、閑を得ても、心から閑を楽しむ気持にもなりません。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがての御恩命をひたすら待ち奉る微衷びちゅうの他ござりませぬ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやこれも、世を思う微衷びちゅうのほかではありません」
どうか微衷びちゅうを酌んで曲げてもご承諾ねがいたい
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)