御岳みたけ)” の例文
旧字:御嶽
紀州の瀞八町、信州の天竜峡、近頃有名になった長州の長門峡などは言うに及ばず、小さな所で甲州御岳みたけの昇仙峡にすら劣っている。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
余事よじではございませんが、毎年、武田家たけだけ行事ぎょうじとして行われてまいりましたところの、武州ぶしゅう御岳みたけにおける兵法大講会へいほうだいこうえ試合しあい
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御岳みたけの奥、金峰山がよかろうというものもありました。或いは天目山を推薦するものもありました。少し飛び離れて駒ヶ岳を指定するものもありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「でも、言っていましたよ。仕事の邪魔になるから、宿へ来るなって言われたので、そのうちお仕事がすんでから、みんなで御岳みたけへ遊びに行くんだ、とそう言っていましたよ。」
新樹の言葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
御岳みたけ、飛龍山、唐松からまつ、猿山などという部落づたいに龍巻村へ向うのが順当なのであるが
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
だってじいさん、そうじゃあねえか、俺らは御岳みたけの氏子だよ。それ神様というものは、氏子を守護まもるがお義務つとめだ。ところが話は反対ぎゃくじゃあねえか。干乾しにしようって云うのだからな
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
才蔵は御岳みたけにつくまで、じゅうぶんうでをきたえておこうというので宿やどへつくと稽古槍けいこやりりて、源次郎をワラ人形にんぎょうのようにきたおす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御岳みたけの山も沢井あたりの山も大菩薩の方も、眼の前につらなっています。与八はこれを見るとまた悲しくなって、そっと後ろの郁太郎を振返ると、子供は無心に寝入っている。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
西沢を遡って国師こくし奥仙丈二山の間の鞍部三繋平みつなぎだいらに登り、荒川に沿うて御岳みたけ方面へ下ろうというのが第一案で、三繋平へ登ったならば、国師岳をえて金山沢を下り、更に釜沢に入り
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「そうだが、このさきはわからないが、とにかくいまのところでは天下平静へいせい御岳みたけ兵学大講会へいがくだいこうえも、今年はさだめしにぎわしかろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかの一人が上がりはなへ出て見ますと、予期に反して、御岳みたけごもりの行乞ぎょうこつか、石尊詣せきそんまいりの旅人らしい風体ふうていのものが格子の外に立っている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
郡内ぐんないの長脇差で、鮎川あゆかわ仁介にすけというものがある。この甲州では有名な博奕ばくちうちでな、その、身内どもが、先ごろ御岳みたけへ参った時に、見たという者の話だが……」
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
罪の軽くすむように、母上と共に、郊外の御岳みたけやしろへ、祈願をこめに行って、夜明けぬうちに戻るからと頼めば、彼らもきっと、見ぬふりをしてくれるにちがいありません
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「や、お前さんは、大山から御岳みたけへ詣るとか言っていた行人衆だね」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)