徘徊うろつ)” の例文
『早くけえつて寢るこつた。恁麽こんな時何處ウ徘徊うろつくだべえ。天理樣拜んで赤痢神が取附とつつかねえだら、ハア、何で醫者藥がるものかよ。』
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
すなわち社内へ進入すすみいッて、左手の方の杪枯うらがれた桜の樹の植込みの間へ這入ッて、両手を背後に合わせながら、顔をしかめて其処此処そこここ徘徊うろつき出した。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
よひくちにははしうへ与太よた喧嘩けんくわがあるし、それから私服しふくがうるさく徘徊うろついてゝね、とう/\松屋まつやよこで三にんげられたつてふはなしなんだよ。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
その夜細川が自宅うちに帰ったのは十二時過ぎであった。何処どこ徘徊うろついていたのか、真蒼まっさおな顔色をしてさも困憊がっかりしている様子を寝ないで待っていた母親は不審そうに見ていたが
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「このごろ、陸奥みちのくの方から、人買いとやら、人攫ひとさらいとやらが、たくさん、京都みやこへ来て徘徊うろついているそうな、もしものことがあっては、良人のやまいにもさわりますし、私とても、生きたそらはありません」といううちに彼女のひとみ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『早くけえつて寝るこつた。恁麽こんだ時何処ウ徘徊うろつくだべえ。天理様拝んで赤痢神が取付とツつかねえだら、ハア、何で医者いしやくすりが要るものかよ。』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「宵の口には橋の上で与太の喧嘩があるし、それから私服がうるさく徘徊うろついててね、とうとう松屋の横で三人も挙げられたって云うはなしなんだよ。」
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ト文三が徘徊うろつきながら愚痴をこぼし出した。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「こうこう仙果さん。大きな声をしなさんな。その辺に八丁堀はっちょうぼりの手先が徘徊うろついていねえとも限らねえ……。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)