彼程あれほど)” の例文
猪子先生は穢多だから、彼様あゝいふ風に考へるのも無理は無い。普通の人間に生れたものが、なにもの真似を為なくてもよからう——彼程あれほど極端に悲まなくてもよからう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
勘「お前のように子供みたいにあどけなくっちゃア困るね、えゝ、オイ何故師匠が彼程あれほどの大病で居るのを一人置いて、ヒョコ/\看病人が外へ出て歩くよ、済まねえじゃアないか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女の差出た事をいふと唯一口に云はるゝか知らねど、正直律義も程のあるもの、親方様が彼程あれほどに云ふて下さる異見について一緒に仕たとて恥辱はぢにはなるまいに、偏僻かたいぢ張つて何の詰らぬ意気地立て
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
誰か何時いつやら、政府のいぬぢや無いかと注意したつけが、どうも先生は既に左様さうと知つて居られるらしかつたよ、彼時あのときの御返事を見ると——彼程あれほど敏慧びんけいな頭脳を邪路から救ひ出してるものが無ければ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼程あれほど学問もあり、弁才もあり、何一つ備はらないところの無い好い人で、こと宗教をしへの方の修行もして居ながら、それでまだ迷が出るといふのは、君、奈何どういふ訳だらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
愛嬌あいきやうもありなか/\大腹おほつぱらひとです、布袋和尚ほていをしやうえんがあるのは住居すまゐ悉皆みなてらです、こと彼程あれほどるまでには、跣足はだしで流れ川をわたやうあやふい事も度々たび/\ツたとさ、遊ぶ時には大袋おほぶくろひろげる事もあり
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「人間も彼程あれほど常識コンモンセンスを失へば気楽なものサ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼程あれほど学問が無くて、彼程蔵書の多いものも鮮少すくなからう、とは斯界隈このかいわいでの一つ話に成つて居る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)