引抜ひきぬ)” の例文
旧字:引拔
飛びつつ、いつか地にやゝ近く、ものの一二けんかすめると見た時、此の沈勇ちんゆうなる少年は、脇指を引抜ひきぬきざまにうしろづきにザクリと突く。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
突かれて男はよろめきながら左手ゆんでのばして槍先を引抜ひきぬきさまグッと突返つきかえす。突かれて孝助たじ/\と石へつまずき尻もちをつく。
その当時の事だから、祖父おじいさんも腰に刀をしていたので、突然いきなりにひらりと引抜ひきぬいて、背後うしろから「待てッ」と声をかけた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こんなのを薄暗い処を通って段々見て行くと、最後に人形が引抜ひきぬきになって、人間が人形の胴の内に入って目出たく踊ってはねになるというのが多かったようです。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
其毛それを下にらして吊鬚つりひげのような具合に見せて居るのです。しかしそれをきびしい僧官に見付けられますとその顳顬こめかみに生えて居るところの毛を引抜ひきぬかれてしまう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
手下の者たちは、仕方がないので、なはをもつてきたり、武器を引抜ひきぬいたりして、首領をとりかこみました。それを見ると、彼はなほたけりたつて、大きなまさかりをとつて、彼等かれらの中に切つていりました。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
差出さしだすを、侍は手に取って見ましたが、旧時まえにはよくお侍様が刀をす時は、刀屋の店先で引抜ひきぬいて見て入らっしゃいましたが、あれはあぶないことで
たがいに死を争いながら平左衞門の側へ摺寄すりよりますと、平左衞門は剛刀ごうとうをスラリと引抜ひきぬ