引下ひきおろ)” の例文
博士は「クンカン?」といつて、一寸小首をかしげたが、そのまゝ起上たちあがつて書棚から新版の辞書を引下ひきおろして来た。
一人いちにんは黒の中折帽のつば目深まぶか引下ひきおろし、鼠色ねずみいろの毛糸の衿巻えりまきに半面をつつみ、黒キャリコの紋付の羽織の下に紀州ネルの下穿したばき高々と尻褰しりからげして、黒足袋くろたびに木裏の雪踏せつた
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
見ると廊下の上、長押なげしに掛けた槍が二本、手槍の方は提灯をかかげて見るとほこりかぶっていて、これはモノにならず、二間半の大身の槍を引下ひきおろして、毛皮のさやを払ってみると
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
あざむかんとするか其儀越前守はとくより承知なり加之しかのみならず問にまかせて主人しゆじんの惡事を申立る段まこと忠臣ちうしん奚ぞ斯る擧動ふるまひあるべきや茲な重々ぢう/\不屆者ふとゞきものそれ引下ひきおろせと下知の下よりたちまち平左衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おほきものぶくろと、小革鞄こかばん一所いつしよに、片手掴かたてづかみに引下ひきおろしたのは革紐かはひも魔法罎まはふびん
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)