左衛門尉さえもんのじょう)” の例文
旧字:左衞門尉
読者方あなたがたの御新造様が決して左様さようなさもしいことを遊ばす気遣いは毛頭ございませんが、我々仲間の左衛門尉さえもんのじょうには兎角ありがちのことで
三宅藤兵衛と今峰頼母たのもは、そのとき奥田左衛門尉さえもんのじょうを振り向いて、何か目じらせした。そして三名ともついと幕の外へ立ってゆく。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
系ハ県主稲万侶あがたぬしいねまろヅ。稲万侶ノ後裔こうえい二郎左衛門尉さえもんのじょう直光知多郡鷲津ノ地頭じとうル。よっテ氏トス。数世ノ孫甚左衛門いみな繁光うつツテ今ノむらニ居ル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
板倉周防守すおうのかみ、同式部、同佐渡守、酒井左衛門尉さえもんのじょう、松平右近将監うこんしょうげん等の一族縁者が、遠慮を仰せつかったのは云うまでもない。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お奉行様は、泣く子も黙る遠山左衛門尉さえもんのじょう様だ。ひとたまりもあるもんじゃねえ。——おお旦那、野郎の部屋にある刃物を、持って来ておくんなせえ
朝倉方は、黒坂備中守、小林瑞周軒ずいしゅうけん、魚住左衛門尉さえもんのじょうを先頭として斬ってかかった。徳川家康としても晴れの戦であったから、全軍殊死して戦い、朝倉勢も、亦よく戦った。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なるほどそこへ現われたのは、当時市中取締りの酒井左衛門尉さえもんのじょうの手に属する巡邏隊の一組です。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
少納言入道信西しょうなごんにゅうどうしんぜいの家来で師光もろみつ成景なりかげ等も、ひときわ目立った才能のある武士で、それぞれ、左衛門尉さえもんのじょう、右衛門尉になったが、信西が殺された時、同時に出家して名を改めた。
源氏にも供奉ぐぶすることを前に仰せられたのであるが、謹慎日であることによって御辞退をしたのである。蔵人くろうど左衛門尉さえもんのじょう御使みつかいにして、木の枝に付けた雉子きじを一羽源氏へ下された。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
左衛門尉さえもんのじょう(川路)与三郎(村垣むらがき)をみて、御機嫌ようといひながら笑ひて冠り物を取りて、うなづくが如く礼をなす。これ大かた魯人の仕方也。かかるところ、長崎といへども曾てなし。
空罎 (新字新仮名) / 服部之総(著)
七月二日に氏房がまた春日左衛門尉さえもんのじょうをして夜討を掛けさせた時とである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もっともはるか東北の方には藤堂和泉守いずみのかみや酒井左衛門尉さえもんのじょうや佐竹左京太夫や宗対馬守そうつしまのかみの、それこそ雄大な屋敷屋敷が、長屋町家を圧迫して月夜の蒼白い空をして、そそり立ってはいたけれど……。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
酒井左衛門尉さえもんのじょう、石川伯耆ほうきなどの家老たちが、家中の人々が聞き知ったところをあつめてのはなしによると、惟任日向守これとうひゅうがのかみ光秀の帰国については
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は縁に近く、池田武蔵入道勝入しょうにゅう、丹羽五郎左衛門尉さえもんのじょう長秀等以下夫々の座に着いた。広間の庭は、織田家の侍八百人余り、勝家の供侍三百余と共に、物々しい警固だつた。
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
左衛門尉さえもんのじょう忠久公より十六代目の御嫡孫也、文武二道の名将にて、上を敬ひ下を撫で、仁義正しくましませば、なびかん草木はなかりけり、御舎弟には兵庫頭ひょうごのかみ忠平公、左衛門尉歳久公
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その区域に立っている大名屋敷といえば、酒井若狭守わかさのかみ、松平左衛門尉さえもんのじょう、青山下野守しもつけのかみ、土井能登守のとのかみ、——といったような人々の屋敷屋敷で、その間に定火消じょうびけしの番所もあれば、町家も無数に立っている。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
要は楠木左衛門尉さえもんのじょう正成の死一つの確認にある。その正成は決してここを出ていず、一族数十名と共に自刃したものとはすでにみとめられていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしや市中取締りの酒井左衛門尉さえもんのじょうの手に属する者にでもでっくわそうものならば、血の雨が降るだろうと、町々の者はヒヤヒヤしているけれど、酒井の手の者も、ついにここまで行き渡らないで
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それなん鎌倉の執権高時の内管領、長崎円喜えんきの子、左衛門尉さえもんのじょう高資たかすけと申す者よ。うそでない証拠も見しょう。きのう今日、蝦夷の津軽から兵乱の飛報が都に入っておる。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)