ちまた)” の例文
斯くて「小田原城中群疑蜂起し、不和のちまたとなつて、兄は弟を疑ひ、弟は兄を隔て出けるに因て、父子兄弟の間もむつまじからず、いわんや其余をや」
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なほ御四五跡をしたうて責討せめうてば、古郷ふるさとほとりは四六干戈かんくわみちみちて、四七涿鹿たくろくちまたとなりしよしを四八いひはやす。
当時政治が鎖国開国のちまたに臨んでゐた如くに、医方も亦漢方洋方の岐に臨んでゐた。正弘は彼に於て概ね開国論に左袒し、伊沢美作守政義みまさかのかみまさよしの洋行の議をさへ容れた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
つく/″\静かに思惟しゆゐすれば、我憲清のりきよと呼ばれし頃は、力を文武の道につからし命を寵辱のちまたに懸け、ひそかに自ら我をばたのみ、老病死苦のゆるさぬ身をもて貪瞋痴毒とんじんちどくごふをつくり
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
一〇九 盆の頃には雨風祭とて藁にて人よりも大なる人形を作り、道のちまたに送り行きて立つ。紙にて顔を描き、うりにて陰陽の形を作り添へなどす。虫祭の藁人形にはかかることはなくその形も小さし。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
もとよりの異僧道衍は、死生禍福のちまたに惑うが如き未達みだつの者にはあらず、きもに毛もいたるべき不敵の逸物いちもつなれば、さきに燕王を勧めて事を起さしめんとしける時、燕王、彼は天子なり
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一〇九 盆のころには雨風祭とてわらにて人よりも大なる人形にんぎょうを作り、道のちまたに送り行きて立つ。紙にて顔をえがうりにて陰陽の形を作り添えなどす。虫祭の藁人形にはかかることはなくその形も小さし。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)