将来ゆくすえ)” の例文
旧字:將來
これではとても文学でパンを得る事は覚束おぼつかないと将来ゆくすえ掛念けねんしたばかりでなく、実は『浮雲』で多少の収入を得たをさえ恥じていた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
身の振り方を尋ねる者、将来ゆくすえの吉凶を尋ねる者、人相家相手相、などを、占なってくれと頼む者、そういう者まで現われた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
将来ゆくすえの望みを語りあったことは僕今でも思い起こすと、楽しいなつかしいその夜のさまが眼の先に浮かんでくる。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
まことに、将来ゆくすえ、自分の血液のつながりを捜し求める唯一の手がかりでもあるし、また、こうしてまだ相見ぬうちは、笛こそ親の姿であり、笛こそ親の声でもある。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眠られぬままに過去こしかた将来ゆくすえを思いめぐらせば回らすほど、尚お気がさえて眼も合わず、これではならぬと気を取直しきびしく両眼を閉じて眠入ねいッたふりをして見ても自らあざむくことも出来ず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「源三郎に会うて、萩乃はぎの将来ゆくすえを頼み、この道場をまかせぬうちは、行くところへも行けぬ。もはや品川あたりに、さしかかっておるような気がしてならぬが、テモ遅いことじゃのう」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かくては前途のためからじと思案して、ある日将来ゆくすえの事ども相談し、かついろいろと運動する所ありしに、おりよくも朝鮮政府の法律顧問なる資格にて、かの地へ渡航するの便びんを得たるを以て
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
横恋慕などとは穢らわしい、そなたこそ誰じゃ? そなたこそ横恋慕! ……妾はこの土地の郷士飯塚薪左衛門の娘栞! ……頼母様とは将来ゆくすえ
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夢みるように、将来ゆくすえの希望をかぞえてみる。また国境の山でいった彼のことばを——花田橋のたもとでいった彼の誓いを——胸のうちで繰返してみるのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああされど今や君はわが力なり。あらず、君を思うわが深き深き情けこそわが将来ゆくすえまことの力なれ。あらず。われを思う君が深き高き清き情けこそわが将来ゆくすえの血なれ。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「この結構な住居すまいを捨て、先祖代々怨み重なる下界の人間と一緒になるとは神罰を恐れぬ馬鹿な女だ。恐らく将来ゆくすえよい事はあるまい、後悔するに相違ない」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのころ鉄也さんは二十一、二で、もし満足の人なら叔父さんのためには将来ゆくすえ希望のぞみであった。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
明るい御世みよとは思わないけれど、歌人として自然を相手に生きている分には、これでも不足とは思っておらぬし、また、弟ののこした二人の幼子おさなごや若後家の将来ゆくすえなどを思えば
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絶えず甲板の上に将来ゆくすえの夢を描いてはこの世における人の身の上のことなどを思いつづけていたことだけは記憶している。もちろん若いものの癖でそれも不思議はないが。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「野心のある豪族に、利用されるのでございましょう。……それにつけても十八公麿まつまろ将来ゆくすえが案じられます。十八公麿のどこかにも、源氏の血がひそんでいるのではないかと」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、遮那王の将来ゆくすえを心のうちでうらなった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの子の将来ゆくすえを見とどけねば……」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)