いっそ)” の例文
「そうですねえ。いっそのこと病気にでもなって、死んででもくれればホットするのですが、あれ一人は一度も病気もしませんし……」
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たしかにお辰と見れば又人もらず、四里あるき、五里六里行き、段々遠くなるに連れて迷う事多く、ついには其顔見たくなりていっそ帰ろうかとト足あとへ、ドッコイと一二ちょう進む内
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それからねいっそのこと針仕事の方が宜いかと思って暫時しばらく局を欠勤やすんでやって見たのですよ。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
養父ようふも義弟も菊五郎や栄三郎いっそ寺島父子になってしもうた堀川の芝居の此猿廻わしのきりにも、菊之助のみは立派りっぱな伝兵衛であった。最早彼は此世に居ない。片市も、菊五郎も居ない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そんなに制帽が気に入らないのなら、いっその事制服までやめてしまって、背広か何かにしたらよさそうであるが、それは又そう行かない理由がある。
かまわずおけば当世時花はやらぬ恋の病になるは必定、如何どうにかして助けてやりたいが、ハテ難物じゃ、それともいっそ経帷子きょうかたびら吾家わがや出立しゅったつするようにならぬ内追払おっぱらおうか、さりとては忍び難し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それともいっその事、有名な女優か何かの声にでもしたら、ホームの雑音にまぎれず、旅客も耳を澄まして聴くだろう。