かん)” の例文
しかものちに考えれば、加え過ぎたのでございまする。多門にはかんに失した代りに、数馬には厳に過ぎたのでございまする。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
八月十日、かん餘作よさくを同伴して初めて来塲す。寛は餘作が暑中休業にて五郎同行来札らいさつするを以て、五郎を母のもとに残し、同五日発にて牧塲に向う。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
青酸は毒のもっともはげしきものにして、舌にふるれば、即時にたおる。その間に時なし。モルヒネ、砒石ひせきは少しくかんにして、死にいたるまで少しく時間あり。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そこには至誠堂病院の院長青木かんをはじめ、二三人の医師が粛然しゅくぜんとして立っていた。先輩の眼は院長に往った。
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
きょうにして敬あらばもって勇をおそれしむべく、かんにして正しからばもって強を懐くべく、温にして断ならばもって姦をおさうべし」と。子路再拝して謝し、欣然きんぜんとして任におもむいた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
眼裏がんりちりあれば三界はせまく、心頭しんとう無事ぶじなれば一しょうかんなり」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
青木かんに罪があると思うね、僕は、一昨年、油井伯が歿くなった時分、木内君の夢を見たが、木内君がありありと出て来て、その話をしたよ、青木の奴、去年庭を歩いてて
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
つつしんで筆鋒ひっぽうかんにして苛酷かこくの文字を用いず、もってその人の名誉を保護するのみか、実際においてもその智謀ちぼう忠勇ちゅうゆう功名こうみょうをばくまでもみとむる者なれども、およそ人生の行路こうろ富貴ふうきを取れば功名を失い
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)