密着くっつ)” の例文
「斬った斬った、今でも池田屋へ行って見ろ、天井も壁も槍の穴でブスブス、血と肉が、あっちこっちにべたべたと密着くっついているわい」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
玉子焼鍋へ油を敷いておいて今の物を少しずつ中間あいだを離して入れます。あんまり密着くっつけて入れると膨らむ時中でたがいに着いてしまいます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
眼の球を破裂する程剥き出し、口を裂ける程引き開き、両の拳を赤ん坊のように握り締め、膝頭をX形に密着くっつけ合わせたまま、床から生えた木乃伊ミイラの姿に変ってしまった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かならず大切だいじにせい軽挙かるはずみすなとおっしゃるは知れたこと、さあ此衣これを着て家に引っみ、せめて疵口くちのすっかり密着くっつくまで沈静おちついていて下され、とひたすらとどめなだめ慰め
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そう言い、孔の一つびとつに針金をしながら、器用な手つきで古い埃をほじくり出した。丹塗にぬりの笛の胴にはいってから密着くっついたのか、滑らかな手擦れでみがかれた光沢があった。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そこで継母ままははは、自分じぶん居室いまにある箪笥たんすのところにって、手近てぢか抽斗ひきだしから、しろ手巾はんけちしてて、あたまくび密着くっつけたうえを、ぐるぐるといて、きずわからないようにし、そして林檎りんごたせて
気のせいか、その釣瓶の一端に、神尾の額からぎ取られた牡丹餅大の肉片が、パクリと密着くっついているもののように見えました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「斬った途端にここへ飛びついたから、また斬った、手首だけ残して倒れた、その手首が、ここに密着くっついて離れない」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ハッと思うまに、密着くっついていた二人のからだが枯野の中に横へ飛び退いて、離るることまさに三間です。
もしも、それらしい女の声でもしたらと、耳を戸袋へ密着くっつけたりなどしましたけれども、それらしい声も聞えません。米友はこうして家の周囲を一通り廻ってしまいました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
頭と頭とを、こっきらことするほどに密着くっつけて、百蔵が
べっとり釣瓶の後ろに密着くっついていました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)